研究課題/領域番号 |
12J00865
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬場 克明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | パラジウム触媒 / ホスホール / 炭素-リン結合切断 |
研究概要 |
リンを含む五員環化合物であるホスホールは、その特異的な物性から有機材料としての応用が期待されている化合物である。従来のボスホール合成法としては有機リチウム試薬およびGrignard試薬とハロゲン化リンを用いる手法が一般的に用いられてきた。しかし、それらの手法には用いる試薬の取り扱いが困難なことや官能基許容性が低いという問題点があった。そこで、従来法に代わるより一般性の高いホスホール合成反応の開発が望まれていた。 このような背景のもと、研究課題である不活性な炭素-ヘテロ原子結合の活性化を鍵とする新規ヘテロ環の触媒的合成法開発に向けて研究活動に取り組んだ結果、不活性な炭素-ヘテロ原子結合である炭素-リン結合の活性化を鍵とするホスホールの新規触媒的合成法を見出すことができた。この手法には炭素-リン結合だけでなく通常不活性な炭素一水素結合の活性化も同時に進行するという興味深い特徴がある。この手法を用いることで、単純で入手容易なトリアリールボスフィンを基質として種々のホスホールを簡便に合成することを可能にした。 具体的には、2-ジフェニルボスフィノビフェニルを触媒量の酢酸パラジウムとトルエン中160℃で反応を行うことで、目的のジベンゾホスホールを80%の収率で得ることができた。つぎに、最適条件で基質の検討を行った結果、様々な官能基が本反応に適応可能であった。特に従来の合成法では用いることが困難なエステル基やアセチル基等のカルボニル基、ニトリル、さらにプロモ基も本反応には用いることができた。得られた化合物は多くが新規化合物であり、有機材料としての興味深い物性が期待できる。 最後に、量論反応を行うことで反応機構に関する詳細な知見を得ることができた。具体的には反応中間体として考えられるパラダサイクル中間体の単離に成功し、その反応性について調査するができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題である不活性な炭素-ヘテロ原子結合の活性化を鍵とする新規ヘテロ環の触媒的合成法開発に向けて研究に取り組んだ結果、不活性な炭素-ヘテロ原子結合である炭素-リン結合の活性化を鍵とするホスホールの新規触媒的合成法を見出した。この手法には、炭素-リン結合だけでなく通常不活性な炭素-水素結合の活性化も同時に進行するという興味深い特徴がある。この手法を用いることで、単純なトリアリールポスフィンを基質として種々のホスホールを簡便に合成することを可能にした。 また、錯体研究等によって反応機構に関する詳細な知見も得られている。これらのことから、おおむね順調に研究が進展したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、本研究課題の目的であった不活性な炭素-ヘテロ原子結合の活性化を鍵とする単純で入手容易な基質を用いた新規触媒的ヘテロ環合成法として、炭素-水素結合および炭素-リン結合の2つの不活性結合の活性化を経るボスホール合成反応を見出すことができた。今後は今回得られた知見を活かして、炭素-硫黄結合等の新たな不活性結合の活性化を鍵とする新規触媒的ヘテロ環合成の開発を検討していく予定である。また、より基質展開が容易な分子間反応にも今回得られた結果を基にして展開していきたいと考えている。
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