研究課題/領域番号 |
12J00890
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒詰 悠太 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ハイデガー / 現象学 |
研究概要 |
交付申請書に記した1年目の目標は、〈存在論的構造〉を精緻にすることであった。この際、具体的には、以下の2点が計画されていた。まず挙げられるのは、(1)〈存在論的構造〉の概念史的探求のために、ディルタイ、フッサール、ロムバッハの諸著作を研究することである。次に(2)〈そのつど性〉の概念史的探求のために、『存在論―事実性の解釈学』や『時間の概念』を初めとする『存在と時間』に至るまでの著作、講義、講演等の参照、研究である。上記2点を通じて、〈存在論的構造〉が如何なる意味を持つか明らかにし、ハイデガー哲学における「全体性の一回的具現化」という運動性を別抉することが本研究の最終目標であった。 このような目標のもと、当該年度に実施した研究は主に上記(2)に資するものであった。平成24年11月17日の日本現象学会での発表(題名=ハイデガー哲学における〈そのつど性〉が持つ意味)では、〈そのつど性〉が「初期ハイデガー」にとり決定的な方法概念である〈形式的告示〉と密接な連関を取り結ぶこと、またこの〈形式的告示〉及びくそのつど性〉がフッサール『論理学研究』における〈偶因的表現〉に由来することを示した。こうした〈そのつど性〉の研究を通じて、人間存在が一回的な全体状況に決定的に依存しつつも、この状況に絶対的に従属することなく、他なる状況へとそのつど常に開かれたものであるという理解を示すことができた。 この理解は、本研究の最終目標である、「全体性の一回的具現化」というハイデガー哲学に見られる運動性を別挟することにとり意義深いものである。というのも上述のように〈そのつど性〉は、そのつどの全体状況における変様可能性を示すものであるという点で、ハイデガー哲学における運動性の根幹に関わる概念と考えられるからである。この意味において当該年度の研究は当初の研究目的に資するものであったということができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記した本年度の目標のひとつは、ハイデガー哲学における〈そのつど性〉について考察することであったが、当初の目標通り、この〈そのつど性〉を主題として学会発表を行うことができた。この〈そのつど性〉の研究はもうひとつの研究目標であった〈存在論的構造〉と密接な連関を持つものであるため、おおむね順調に研究は進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究1年目のもうひとつの目標であった、〈存在論的構造〉についての理解を深めてゆく。このことを通じて、計画2年目の当初の目標であった、ハイデガー哲学全体を運動性としてするという計画にもできる限り研究を展開していきたい。
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