研究課題/領域番号 |
12J00904
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柴田 祐 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ハフニウム / アルミニウム / イットリウム / ジアミド錯体 / C-H結合活性化 |
研究概要 |
本研究では新規前周期遷移金属-ジアミド錯体触媒の創製とその触媒的sp3 C-H結合官能基化反応への応用を目的とし、検討を行った。 まず、カチオン性4族金属錯体と等電子構造を有する3族金属-ジアミド錯体の合成を行った。既に当研究室で知見を得ているアルキルイットリウム-ジアミド錯体を用いたプロパルギル位sp3 C-H結合メタル化を、新たなC-C結合生成反応へと利用することを企図し、引き続く求電子剤との反応を試みた。その結果、C=O結合やC=N結合への求核的付加反応が進行することを見出した。 更なる反応性の向上、基質適用範囲の拡大、触媒反応への展開を目的とし、より簡便かつ多様性指向型のジアミド錯体合成法として、トリアルキルイットリウム錯体とジアミンとの反応によりアルキルイットリウム-ジアミド錯体を合成した。得られた錯体のC-H結合活性化能を検討したところ、種々の含窒素芳香族化合物のsp2及びsp3 C-H結合を切断可能であることが明らかとなった。また、置換ピリジンとの反応では、脱水素型C-H/C-Hホモカップリングが進行し、生成物により架橋された新規イットリウム二核錯体が得られることを見出した。 また、アルミニウム二核錯体を用いたC-H結合活性化反応について検討を行った結果、架橋配位子によりC-H結合活性化能が異なるという新たな知見を得ることができた。具体的には、窒素架橋アルミニウム二核錯体を用いるとカルバゾールやジフェニルアミンのC-H結合メタル化が進行するのに対し、酸素架橋アルミニウム二核錯体はC-H結合メタル化に活性を示さなかった。この知見は、C-H結合活性化を志向した新たな遷移金属錯体の合成設計をする上で、極めて重要であると考えている。本研究成果はEur. J. Inorg. Chem誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である新規カチオン性ハフニウム-ジアミド錯体の簡便な合成法の確立には至っていないが、同様の電子構造を有する3族金属-ジアミド錯体の合成とその反応性について、極めて重要な知見を得た。更に、アルミニウム二核錯体のC-H結合活性化研究で得られた知見は、新たな錯体・配位子設計の指針を与え、一層高活性な触媒系の開発が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
合成したジアミド錯体のC-H結合活性化能の基質適用範囲を引き続き検討するとともに、C-C結合生成反応、触媒的官能基化反応へと展開する。更に、本研究と同時期に行った、アルミニウム二核錯体のC-H結合メタル化に関する研究で得られた知見を基にした新たな配位子設計により、新規前周期遷移金属二核錯体の合成とそのC-H結合官能基化反応への応用を検討する。
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