研究概要 |
本研究は、より高輝度な赤色長残光蛍光体を創生するための指針を得ることを目的とし、希土類添加ペロプスカイト酸化物残光蛍光体を中心に材料作製を行い、光電流などの新たな手法を用いて、その機構解明を試みた。当該年度は、Pr^<3+> : 1^D_2→3^H_4にもとづく赤色蛍光を示すPr^<3+>イオンを発光中心とした(Ca, Sr)TiO_(3)、(Ca, Y)(Ti, Al)O_(3)固溶体を作製し、その光電物性を評価した。Pr^<3+>を添加した(Ca, Sr)TiO_3固溶体中の発光機構について、発光および光電流測定を行うことにより知見を得た。具体的には、Pr^<3+>イオンの発光過程において、形成されるとされてきた電荷移動状態Pr^<3+>+Ti^<4+>→Pr^<4+>+Ti^<3+>をTi^<3+>を3d軌道が形成する母体の伝導帯下端への電子移動、つまり光電流として実験的に初めて観測した。これにより、Pr^<3+>の4f準位と母体の電子エネルギー構造のエネルギー位置関係を明らかにした。さらに、熱ルミネッセンス測定などの残光特性評価により、CaTiO_3からSrTiO_3量が増えるに従ってキャリアトラップ深さは浅くなる傾向があることを示した。前述の結果をもとに、バンドギャップを広げることにより、トラップ深さを制御できると考え、(Ca, Y)(Ti, Al)O_(3) : Pr蛍光体を作製し、光物性評価を行った。Y、Alの置換量が増加するとともに、バンドギャップ、電荷移動遷移エネルギーは増加し、トラップ深さエネルギーがわずかに増加することが明らかとなった。また、Pr^<3+>イオンの4fエネルギー準位に対する相対的な伝導帯エネルギー上昇により、5%という微量のY, Al置換によって、赤色発光(Pr^<3+> : ^1D_2→^3H_4)強度が6倍まで高められた。以上のようにPr添加ペロブスカイト残光蛍光体について、組成を変化させることにより、残光特性を制御できることが示された。
|