本研究は、乳がんの悪性化を抑制できるユビキチンリガーゼCHIPの発現を乳がん組織内で亢進させることのできる化合物の探索と機能解析を目的としている。CHIP遺伝子はエストロゲン受容体(ER)を介して、ER応答配列(ERE)非依存的に発現調節されている可能性がすでに示されている。エストロゲンはEREを介して腫瘍形成を促進することが知られていることから、エストロゲン様の作用を示さず、CHIPの発現を亢進できる新たな化合物の探索を行った。 1、化合物のスクリーニングを効率的に行うため、CHIPプロモーター上で発現調節に必要な領域の同定を行った。まず、乳癌細胞株を用いてCHIP遺伝子のプロモーター領域をクローニングし、全長から領域を短くしたさまざまな長さの欠損変異体を作製した。 2、作製した変異体を用いてレポーターアッセイを行い、CHIP遺伝子の転写を活性化および抑制させる転写調節領域を同定した。 3、得られた領域を用いて化合物のスクリーニングを行うにあたり、細胞濃度や核内レセプターの発現量等の条件等を検討し、至適化を行った。 4、化合物ライブラリーを用いて補化合物のスクリーニングを行った。数万化合物の中から、in silico解析によって核内受容体に結合すると予測される約7500種類の化合物を入手した。EREもしくは、CHIPプロモーター領域をもつレポータープラスミドをER陽性乳がん細胞に導入し、入手した化合物を添加した状態でレポーターアッセイを行った。これによって、化合物の中から、EREの転写活性化を示さず、CHIPの発現を亢進する化合物を探索した。
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