研究課題/領域番号 |
12J01013
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高見 拓 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 経肺投与 / 両親媒性ブロック共重合体 / w/o/wエマルション / 自己乳化 / 多孔質粒子 / 表面修飾 |
研究概要 |
平成25年度では、(1)粒子表面の修飾用材料として両親媒性ブロック共重合体(methoxy-PEG-b-PLA)特に、高分子量体の調製条件下での精密合成と、(2)表面修飾材が含有した有機-水混和系での自己乳化エマルション形成条件の最滴化、そして(3)得られた粒子の表面形態観察と粒子径制御を行い、両親媒性ブロック共重合体が粒子径、空孔数、空孔径に与える影響を評価した。 (1)両親媒性ブロック共重合体の精密合成を行った結果、分子量分散が狭い、methoxy-PEG9000-b-PLA7000等の7種の高分子の合成に成功し、GPC、NMR測定によって目的の分子量を有する両親媒性ブロック共重合体が合成されたことを確認した。(2)両親媒性ブロック共重合体を添加し、一段階の撹拌によって形成したw/o/wエマルションの形態を観察したところ、両親媒性ブロック共重合体の疎水性部が大きくなるに従い、粒子中に水が保持されることが分かった。また、この条件で得られる粒子には空孔が存在しにくくなることもわかった。この結果から、前述条件では、経肺投与に適さない粒子が得られてしまうことがわかったが、親水性薬物を効率的に疎水性粒子中へ導入可能となることもわかった。これまでに、疎水性粒子中への親水性薬物の封入は困難かつ、効率的な封入方法は存在しなかったが、この方法によって粒子を調製することで、親水性薬物の封入が容易に可能となることが分かった。調製条件を調節することで空孔を有する、内部に水を保持した(内部に親水性薬物を保持した)経肺投与に適する粒子も調製可能であると考えられる。(3)粒子の特性評価を行った結果、PEG鎖長が長くなることで、小さな空孔が生じることがわかった。また、両親媒性ブロック共重合体の添加した量によって空孔数が容易に調節可能であることもわかった。これまでに、粒子径(小、中、大)、空孔径(小、中、大)、空孔数(少、中、多)それぞれの因子が組み合わさった9種類の粒子を調製できており、肺深層部への送達に適するとして考えられる粒子が調製できている。これらの結果から、以後に行う生体外実験に用いることが可能な粒子が調製されていることが言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経肺投与に適するとされる粒子の調製条件が確立され、さらに、両親媒性ブロック共重合体を選択することで、水を粒子内に保持する(親水性薬物を効率的に疎水性粒子内へ導入する)ことを見出せており、さらに、強力な乳化(超音波等)を必要としないため、熱で変性しやすいタンパク質等の親水性薬物の封入が容易に可能であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 自己乳化現象の解明 PEG鎖長が長くなることで小さなエマルションが形成することが分かっているが、その形成機構は明らかにされていない。そのため、高分子種の選択等を行い、界面の物理化学的特性を評価する予定である。 2. 肺への送達率の評価 模擬肺(カスケードインパクター)用いて、肺内での粒子の沈着性を評価する。粒子の沈着性から肺深層部への送達率が高い粒子を調製する。 3. モデル薬物(蛍光物質)を用いた薬物封入粒子の調製と生体外での薬物徐放実験 粒子内部にモデル薬物である蛍光物質を封入し、粒子からの薬物放出試験を生態環境に模した条件下で評価する。
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