平成26年度では(1)methoxy-PEG-b-PLAの有する自己乳化特性の解明に挑み、(2)多孔質粒子の多孔質構造の形成機構の解明に挑んだ。 (1)これまでに、自己乳化作用に関する論文は数多く出されているが、PEG系の高分子系界面活性剤が有する自己乳化特性や機構というものは明らかにされていない。そこで、methoxy-PEG-b-PLA有機溶液と水との界面張力を測定し、界面に配向する分子鎖数を算出し、界面化学的現象に分子量の差が及ぼす影響を評価した。その結果、PEG分子量が増大するに従い界面に配向する分子鎖数は上昇し、分子量が9000程度を超えると逆に分子鎖数は減少するという結果が得られた。これは、分子量が増加するとPEG分子中に存在する酸素原子が増加し、水分子との水素結合数が増加しPEG-水-PEG間の結合が多く形成されたことが原因と予測できる。多くのPEG-水-PEG間の結合は高分子鎖同士を凝集させ、結果的に界面に配向する分子鎖数の上昇が生じたと考えられる。一方、分子量が増大しすぎると、大きい排除体積効果が生じ、PEG-水-PEG間の結合数が少なり、界面に配向する分子鎖数が減少したと考えられる。以上の様に自己乳化の特性は高分子の分子量により大きく影響し、水素結合の数と排除体積効果に支配されている現象であることがわかり、特異的な乳化機構の解明の糸口をつかむことができた。 (2)多孔質粒子の形成機構を光学顕微鏡で詳細に観察した結果、内部エマルションが不安定なものであった場合に多孔質粒子が得られることがわかった。不安定なエマルションの存在により、隣接するエマルションと合一しあい、有機溶媒除去時に外水相と連結することで空孔が形成されることが観察された。以上より、多孔質粒子を調製する場合には、エマルションの不安定性を巧みに制御することが重要であると判明した。
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