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2013 年度 実績報告書

海馬シナプス可塑性を誘導する内因性メカニズムに関する生理心理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 12J01035
研究機関北海道大学

研究代表者

鈴木 江津子  北海道大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(PD)

キーワード海馬 / 可塑性
研究概要

本研究課題は、海馬シナプス可塑性を誘導する内因性メカニズムを検討することを目的としている。本年度は、記憶の獲得や想起に関連がある脳活動を考えられている高周波の律動波であるガンマオシレーション(20-80Hz)に関する研究を行った。海馬スライス標本を用いたin vitro実験において、カイニン酸型グルタミン酸受容体の作用薬である低濃度のカイニン酸を投与することにより、海馬の下位領域の1つであるCA3野において頑健なガンマオシレーションが引き起こされることが知られている。海馬CA3野のガンマオシレーションの発生には、CA3野の興奮性と抑制性の神経細胞からなる反回性の神経回路が寄与すると考えられているが、局所神経回路機構については不明な点がある。そこで、海馬CA3野のガンマオシレーションにおけるカイニン酸受容体の役割について、新規に合成されたカイニン酸受容体選択的阻害薬であるACETを用いて検討した。まず初めに、ACETがCA3野に発現するカイニン酸受容体を阻害するのか、海馬急性スライス標本を作成し、スライスパッチクランプ法を用いて検討した。苔状線維―CA3シナプスよりカイニン酸受容体を介するシナプス電流を記録している際にACETを投与するとシナプス電流が阻害されたことから、新規に合成されたカイニン酸受容体阻害薬であるACETは、急性海馬スライス標本の苔状線維―CA3シナプスに発現しているカイニン酸受容体を阻害することが示された。続いて、ガンマオシレーションにおけるカイニン酸受容体の役割を検討するため、CA3野より局所フィールド電位を記録した。低濃度のカイニン酸を灌流投与することにより頑健なガンマオシレーションが誘導されたが、ACETを共投与することによりガンマオシレーションのパワー値が有意に減少した。これらの結果から興奮性または抑制性神経細胞に発現するカイニン酸受容体がガンマオシレーションの維持に重要な役割を担うことが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度の研究において、内在性のアセチルコリン入力を刺激することにより海馬錐体細胞に生じる遅い脱分極を安定に記録することができなかったため、アセチルコリン以外の内在性のメカニズムを検討することを目的とし、ガンマオシレーションのメカニズムに関する研究に着手した。そのため本年度は基礎的なデータを取得するに留まった。

今後の研究の推進方策

本年度得た基礎的なデータをもとに研究を進展させる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 海馬の神経伝達・シナプス可塑性・記憶機能におけるグルタミン酸とアセチルコリンのクロストーク2013

    • 著者名/発表者名
      鈴木江津子・岡田隆
    • 雑誌名

      心理学評論

      巻: 56 ページ: 310-319

    • 査読あり
  • [雑誌論文] カイニン酸型グルタミン酸受容体2013

    • 著者名/発表者名
      鈴木江津子・神谷温之
    • 雑誌名

      脳科学辞典(インターネット辞典)

    • 査読あり
  • [学会発表] Roles of postsynaptic density in spatiotemporal control of glutamate receptors.2014

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, E., & Kamiya, H.
    • 学会等名
      日本生理学会第91回大会
    • 発表場所
      鹿児島大学(鹿児島市)シンポジウム
    • 年月日
      2014-03-16
    • 招待講演
  • [学会発表] Kainate receptor-mediated modulation of network activity in the hippocampus.2013

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, E., & Kamiya, H
    • 学会等名
      生理学研究所研究会「シナプス・神経ネットワークの機能ダイナミクス」
    • 発表場所
      生理学研究所(岡崎市)
    • 年月日
      2013-12-12
  • [学会発表] ACET selectively blocks postsynaptic kainate receptors at the hippocampal mossy fiber synapse2013

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, E., & Kamiya, H.
    • 学会等名
      Neuroscience 2013 (Society for Neuroscience)
    • 発表場所
      San Diego convention center (USA)
    • 年月日
      2013-11-11
  • [学会発表] Cholinergic modulation of hippocampal plasticity2013

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, E.
    • 学会等名
      日本動物心理学会第73回大会
    • 発表場所
      筑波大学(つくば市)
    • 年月日
      2013-09-14
    • 招待講演
  • [学会発表] 海馬CAI野におけるアセチルコリン作動性緩徐シナプス応答のスフイスパッチクランプ解析2013

    • 著者名/発表者名
      鈴木江津子・神谷温之
    • 学会等名
      生理学会北海道地方会
    • 発表場所
      旭川医科大学(旭川市)
    • 年月日
      2013-08-31
  • [備考]

    • URL

      http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~e20632/Suzuki.html

  • [備考]

    • URL

      http://researchmap.jp/esuzuki

URL: 

公開日: 2015-06-25  

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