本年度は、沖縄県のビーチロック周辺から採取した尿素分解菌を用いて、砂供試体を一軸圧縮強さ(UCS)で数MPa以上に固化することを目的として、大きさの異なる2つの容器(シリンジおよびカラム)を用いて固化試験を実施した。 シリンジ試験では、各試験条件がUCSに与える影響を把握すべく、いくつかの異なる試験条件のもとで、砂試料の入ったシリンジ容器(直径2.5 cm)に尿素分解菌Pararhodobacter sp.から成る培養液、Ca源や尿素を含んだ固化溶液を順に注入・排水し、湿潤状態を保って一定期間養生した。その後、定期的に固化溶液を注入・排水し、試験期間14日後に砂供試体に対して針貫入試験を行うことでUCSを推定した。その結果、養生温度(20~35 ℃)や固化溶液のCa2+濃度(0.1~0.3 M)が高いほど、推定UCSはそれぞれ大きくなることが示された。また、固化溶液のpH(6.9~9.0)が小さい方が、推定UCSは大きかった。 シリンジ試験の結果を参考にして実施したカラム試験では、供試体サイズ(直径5 cm、高さ10 cm)および試験期間(最長28日)を大きくすることでUCS増加を図った。その結果、UCSで最大10 MPaを有するカラム供試体の作製に成功した。UCSで10 MPaを発現した試験条件は、試験期間28日、養生温度30 ℃、固化溶液の注入間隔1日、固化溶液のCa2+濃度0.3 Mであった。また、重回帰分析の結果、UCSに重要な影響を与える試験条件は固化溶液のCa2+濃度(x)と試験期間(y)であり、これらの試験条件を説明変数とするUCSの予測式はqu = 48.3x +0.456y -19.51となる可能性が示された。
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