研究概要 |
本研究の目的は,EU諸国の政治・経済的中心を担うドイツ連邦首都ベルリンを対象とし,特にインナーシティにおいて顕著にみられるジェントリフィケーションの動態と,それにより引き起こされる住民の抵抗運動を,社会経済的及び文化歴史的側面から多角的に明らかにすることである.本研究計画は,(1)ジェントリフィケーションに関する定量的調査,(2)対ジェントリフィケーションに関する質的調査の2点から進められる.(1)では,ジェントリフィケーションを誘発する背景的要因として,(1)各東西インナーシティにおける歴史的都市構造の差異(2)東ベルリンの潜在的価値(3)欧州圏における中心性を主要因として認識する.(1)東西ベルリンにおける構造的差異は第二次世界大戦以降の都市計画策定に遡り,1970年代以降の再開発計画やインナーシティ地区の住宅近代化にまで顕在化した.特に1980年代の西ベルリン市インナーシティ地区では急進的な再開発が行われ,老朽化した住宅を中心に新規建設が進められた.(2)東西統合後の開かれた市場において,特に1940年代までに建設された住宅(アルトバウ)が多く残存していた旧東ベルリン・インナーシティ地区の賃貸物件が価値の差value Gapとなり,新たな住宅市場を創出した.(3)住宅市場における同トレンドは非常に一過性が強く,特に市住宅の85%以上が賃貸契約物件であるベルリンにおいて,居住者層の変動性は非常に高く,従って賃料の上方変動は重要な問題となる.特に2013年現在,欧州危機の中にあるベルリンは住宅市場において市民(高所得者層・移民・外国人・アーティスト等)により特殊な構造を形成する.従って発生する(2)対ジェントリフィケーションは,賃料値上げによる居住者層の変化や大型再開発による地域変容に対する市民の抵抗運動を,運動主体から明らかにする.特に2004年に始動した大型再開発メディアシュプレーは2013年現在でも市民団体の基,反対運動がなされている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は上述の研究目的に基づき,まず,(1)ジェントリフィケーションに関する調査として,特定地区におけるアンケート調査依頼・配布及び行政機関(Quartiermanagement, Berliner Mieterverein e.V等)への聞取り調査により,ベルリンにおけるジェントリフィケーションを定量・定性的に調査することを予定している.また(2)対ジェントリフィケーションに関する調査として,関連する市民団体(Initiativkreises Mediaspree versenken等)への聞取り調査を継続して実施する予定である.なお本年度に関しては,より積極的かつ短期的に関連学術雑誌へ研究成果を報告する予定である.
|