研究課題/領域番号 |
12J01076
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
カオティ トゥイリン 広島大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | レアメタル回収 / マンガン酸化物 / マンガン酸化細菌培養 / DHSリアクター / 硝化細菌共生 |
研究概要 |
研究テーマはDown-flow Hanging Sponge (DHS)リアクターを用いた排水及び海水からのレアメタル回収である。 マンガン酸化物はレアメタルに対して高い吸着性能があることが知られている。このマンガン酸化物はマンガン酸化細菌によってつくられる。そのためマンガン酸化細菌を培養し効率的にマンガン酸化物を生成できれば排水中からレアメタルを回収が期待できる。しかし、複合系でのマンガン酸化細菌の培養はとても難しいことが知られてあり、その理由は有機物濃度が高いと競合細菌に負けてしまうと考えられる。 本研究では、マンガン酸化細菌の集積培養技術の確立と、レアメタルの吸着回収性能の評価を行います。そのため硝化細菌との共生によるマンガン酸化細菌の培養というアイディアを考えている。これによって、硝化細菌の代謝物を連続的に供給することができる。DHSリアクターはバイオマス保持能力が高くマンガン酸化細菌を高濃度に集積培養できることが期待される。また、スポンジ担体に形成したマンガン酸化物は沈降性が高く回収が容易である。 実験の結果 マンガン酸化細菌の培養に成功した。自然界でのマンガン酸化速度より100倍以上高い性能を達成した。また、レアメタルの回収実験ではCoが100、Niが50(g.m^<-3>.day^<-1>)の回収能力があった。新種のマンガン酸化細菌の存在が示唆された。マンガン酸化細菌の培養には成功したが、実用化には更に10倍の速度が必要である。そこで次のようなアイディアで、マンガン酸化速度を向上させる。 ・アンモニア供給を止め、硝化細菌や來雑細菌を排除し、担体内にマンガン酸化細菌が増殖可能なスペースを確保 ・メタン酸化細菌との共生培養 (メタンが利用可能なら,排ガス再利用や地球温暖化の低減にも貢献。また、アンモニアよりも運転管理が容易) ・新規マンガン酸化細菌の生理生態評価
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンモニア供給DHSリアクターのマンガン酸化速度は1年前と比べ6倍の0.6kg.m^<-3>.day^<-1>を達成した(目標値は1kg.m^<-3>.day^<-1>)。メタン酸化細菌との共生培養でも同様にマンガン酸化細菌の培養が可能であることが明らかになった。マンガン酸化速度は0.2kg.m^<-3>.day^<-1>と、アンモニア供給の系と比べ低いが運転管理は容易である。
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今後の研究の推進方策 |
マンガン酸化性能の目標値を達成するにはマンガン酸化機構を調べる必要がある。マンガン酸化にはマルチ銅酸化還元酵素が関与しているとの報告がある。マルチ銅酸化還元酵素を測定しマンガン酸化活性との関係を調査する。 また、工場排水や鉱山排水は低pHであることが多いことから、マンガン酸化細菌の適用下限pHを調べることはとても重要である。そのため低pH環境でもマンガン酸化細菌が培養できるかを調べる。
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