・研究の目的 マンガン酸化物はレアメタルに対して高い吸着性能があることが知られている。このマンガン酸化物を生成するマンガン酸化細菌を培養し、効率的にマンガン酸化物を生成できれば排水中からレアメタルを回収が期待できる。しかしながら、複合系でのマンガン酸化細菌の培養はとても難しいことが知られている。その理由は有機物濃度が高いと競合細菌に負けてしまうと考えられる。 本研究では、マンガン酸化細菌の集積培養技術の確立と、レアメタルの吸着回収性能の評価を行う。そのため硝化細菌との共生によるマンガン酸化細菌の培養というアイディアを考えた。硝化細菌の代謝物を連続的に供給することができる。DHSリアクターはバイオマス保持能力が高くマンガン酸化細菌を高濃度に集積培養できることが期待される。また、スポンジ担体に形成したマンガン酸化物は沈降性が高く回収が容易である。 ・今年度の実績の概要 一昨年に引き続き、昨年度もアンモニア供給DHSリアクターの運転を行い、現在までにマンガン酸化速度0.75㎏. m^<-3>. day^<-1>を達成している。本研究の目標値であった1㎏. m^<-3>. day^<-1>の達成には至っていない。更に、アンモニアに代わる有機物源としてメタンを供給し、メタン酸化細菌との共生培養でも同様にマンガン酸化細菌の培養が可能であることを示した。メタン供給DHSのマンガン酸化速度は最大0.35㎏. m^<-3>. day^<-1>とアンモニア供給の系と比べ低いが、増殖が早い、運転管理が容易である事が分かった。更に、工場排水や鉱山排水は低pHであることが多いため、マンガン酸化細菌の排水適用下限pHを調査した。200日間の連続培養の結果、マンガン酸化細菌は5.5程度の低pH環境下でも瑳養できる事が分かった。また、培養したバイオマスからDNAを抽出し、パイロシーケンシングによる群集構造解析を行った結果、低pH環境下でマンガン酸化を行っている細菌グループを特定する事ができた。
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