研究課題/領域番号 |
12J01077
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金田 邦雄 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 超対称性 / パリティの破れ / トップクォーク / LHC実験 / メソン |
研究概要 |
本研究では、超対称性について、高エネルギー領域と低エネルギー領域の両方からアプローチし、 (1)TeV領域におけるトップクォーク対生成過程、 (2}種々のメソンのパリティを破るQCD過程 において、超対称性によるパリティの破れに着目した間接的な検証を行うことを目的としている。これにより、全てのフレーバーのsquarkについて、左巻きと右巻きの質量の縮退を調べる。Large Hadron Collider(LCC)実験により、超対称性粒子の発見に向けた解析が盛んに行われているが、未だ見つかっていない。本研究は、超対称性粒子が直接観測されない場合でも、その痕跡を調べられるという点で重要である。また、未解析なパリティを破るメソンの崩壊を理論的に評価できれば、実験的にも重要な意義を持つ。 我々はまず、(1)のアプローチにおいて、effective operatorの方法を用いた解析を行った。この時、パリティの破れに最も支配的な、QCDのゲージ相互作用が寄与する過程を評価し、論文にまとめた。結果として、パリティの破れはLHCで観測可能だが、Yukawa相互作用まで含めた、更に詳細な解析が必要なことが分かった。その解析についても、現在までに主要な部分を終えており、論文を執筆中である。 (2)のアプローチでは、チャームクォークのメソンであるη,について、パリティを破る崩壊を評価した。この崩壊過程には、既に実験的な上限が得られており、超対称性の寄与は、これを下回ることがわかった。一方で、この時用いた評価方法に関して、我々は新しい手法を開発した。この方法は、超対称性以外の模型に対しても適用可能であるため、将来的にも有用であると期待される。他のフレーバーについても、パリティを破る核子の相互作用に対する有効理論を利用し、超対称性によるパリティの破れの大きさを評価した。しかし、破れの大きさは実験の制限には抵触せず、左巻きと右巻きsquarkの質量の縮退度に制限を与えることはできないことがわかった。結果をまとめた論文は、雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、(1)のアプローチに対して、Yukawa相互作用まで含めた場合の、LHCでの観測可能性を議論する予定だった。Yukawa相互作用を含まない場合の解析は、すでに論文で発表済みである。現在、Yukawa相互作用も含めた場合の論文を作成中であるが、計画はおおむね達成できている。また、(2)のアプローチについても、計画通りに解析は終了し、その論文は雑誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の達成状況はおおむね順調であるため、今後の研究も当初の計画通り進めて行く。LHCにおける、トップクォークの対生成を利用したパリティの破れの観測可能性に関しては、計画1年目に主な部分は調べ終えた。2年目には、International Linear Collider(ILC)を用いて、パリティの破れをどう観測するかを議論する。ILCでは電子と陽電子を衝突させるため、陽子を衝突させるLHCよりも、生成された粒子のヘリシティ情報を調べやすい。そのため、超対称性によるパリティの破れに、より敏感であると考えられる。よって、将来的にILCで調べられる粒子の生成イベントについて、パリティの破れを評価することは重要である。また、超対称性以外の、パリティを破り得る新しい物理(ワープした余剰次元等)についても、積極的に調べて行く。
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