光エネルギーを貯蔵可能な水素などの化学エネルギーへと変換することは持続可能な社会を実現するために喫緊の課題である。天然では植物や藻類は光合成を行うことで、水と二酸化炭素から酸素と化学エネルギーである炭化水素を生成している。人工的に光合成システムを構築するには、光の捕集・電荷分離、水の酸化反応と還元反応という3つのプロセスを最適化し、さらにそれらを複合化する必要がある。これまでに、光エネルギーを用いて水と酸素から、可搬性に優れた液体の化学燃料である過酸化水素を製造することを目指して研究を展開してきた。ルテニウム錯体を光増感剤、水酸化イリジウム粒子を水の酸化触媒として用いると、酸性条件下、可視光を照射することで、水と酸素から過酸化水素が得られることを見出した。今回、生成した過酸化水素の分解を防ぐために、ナフィオン膜で分離した二層系の光電気化学セルを用いた反応の検討を行った。光電気化学セルの陽極と陰極のそれぞれに可視光応答の水の酸化半導体触媒と酸素を選択的に過酸化水素に還元する金属錯体触媒を固定化し、可視光を照射することで過酸化水素の生成を確認した。種々の反応条件を最適化することで、効率よく過酸化水素を製造することに成功した。 また、二酸化炭素固定を行うために、二酸化炭素の還元触媒について検討した。有機配位子で修飾した金ナノ粒子を電極触媒に用いた二酸化炭素の還元反応を行った。まず、金のナノ粒子を合成し、得られた金ナノ粒子に過剰なN-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子を加え、表面のキャッピング配位子をNHC配位子に置換した。これを電極触媒に用いて反応を行った結果、NHC修飾した金ナノ粒子はNHC配位子で修飾してない金ナノ粒子と比較して、二酸化炭素還元の選択性と活性が向上した。金ナノ粒子の表面を修飾することで、電気化学による二酸化炭素の還元反応の活性を制御できることを示唆した。
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