研究課題/領域番号 |
12J01108
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
兼子 峰明 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 空間注意 / ハト / 視覚 / 比較認知科学 / 鳥類 |
研究概要 |
一年目の目標は、ハトが実験装置内で自由に行動できる状態においてリアルタイムでハトの頭部位置・向きを計測して、それに応じて刺激呈示を可能にするオペラント実験システムを確立することであった。このために、装置の開発を行い、そしてハトに行動課題を訓練し、本システムに最適な課題手続を開発した。 開発した実験装置は、前面と側面の計3面がコンピュータモニタで囲まれた箱体で、課題報酬として食物を供給するためのフィーダーは背面に設置された。正面にアクリル板がつるしてあり、ハトはこれをつつくことで心理実験を行った。左右にはカメラが設置してあり、箱内におけるハトの眼球位置を測定する。この実験箱内を自由に行動するハトの頭部位置と方向をリアルタイムで計測するソフトウェアを開発した。ハトの眼球の形状および色相と彩度をもとに2次元座標系で位置を求め、次に2つのカメラの情報から3次元空間におけるハトの頭部位置と方向を求める。上述の新開発した行動実験システムを用いて、頭部方向を課題随伴性に含めたGo/NoGo課題をハトに訓練し、その行動課題の最適化を行った。課題を始めるためには、ハトはペック板の手前で待機して、頭部を装置前後軸から±8度以内に定位しなくてはならない。この状態で一定時間待機すると、画面上の一点に標的刺激が呈示された。刺激呈示までの待機時間と刺激の呈示位置は試行間でランダムに決定された。ハトは、刺激が呈示されている状態でペック板をつつくと食物報酬が得られた。刺激が呈示されるまでの間に頭部方向が±8度を超えると、刺激呈示までの待機時間のカウントがリセットされた。このような手続きを用いることで、ハトは頭部を前方方向に維持することを学習し、これによって刺激をハトの頭部軸に対して特定の位置に呈示することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の目標は、実験装置内で自由に行動しているハトの頭部位置と向きをリアルタイムで計測し、それに応じて刺激呈示を可能にするオペラント実験システムを確立することであった。実験装置左右に設置したカメラから、3次元空間におけるハトの頭部位置と方向を推定することができるシステムを構築し、これを実現した。次にこの装置でハトに、頭部方向を課題随伴性に含めたGo/NoGo課題を訓練した。この手続きを用いることで、ハトは頭部を前方方向に維持することを学習し、これによって視覚刺激をハトの頭部軸に対して特定の位置に呈示することが可能となった。研究課題とするハトの注意の性質の分析に必要な準備は整った。
|
今後の研究の推進方策 |
ハトの選択的空間注意を調べるため、先行手がかりgo/nogo課題をハトに訓練する。ハトが課題を順調にこなせるようになったら、注意による反応促進効果が頑堅に観察される条件を決める。具体的には刺激の形や輝度、先行手がかりと標的刺激の間隔、食物報酬の頻度などを調整していく。基本的な実験系が確立したら、本実験を進めていく。先行手がかりを複数個所に呈示することでハトにおける空間的注意の分布をしらべる。
|