研究課題
昨年はリアルタイムでハトの頭部位置・方向を計測して、それに応じて刺激呈示を可能にするオペラント実験システムを確立した。本年はこの装置の頭部方向推定における精度の評価をおこなった。その結果、3次元空間上での頭部方向の推定は誤差±4度程度であることが明らかになった。本研究課題の中心窩間での注意の相互作用を調べる上では極めて十分な精度と言える。これに引き続き、先行手がかりGo/NoGo課題をハトに訓練して、視野内の注意の分布を計測した。その結果、先行手がかり刺激による注意の補足の影響は同側視野内に限定しており、反対側には影響がなかった。この結果は、ハトは左右の視野で独立した注意資源をもつ可能性を示す。また、手がかり刺激と標的刺激の時間間隔(SOA)が50msの条件において、ハトは手がかり刺激による反応抑制効果を示した。霊長類においてはこのような抑制効果はSOAがより長い場合に観察される。これは、ハトの注意の移動が霊長類に比べて非常に高速である可能性を示す。鳥類では、視覚の時間解像度(Critical flicker frequency)が霊長類に比べて高いことが知られている。高い時間解像度をもつパターン認識と高速な注意の移動を組みわせることで、全体として非常に高速な視覚処理系を発達させている可能性が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究成果は、当初行う予定でなかった実験によるものであるが、本研究課題の問いにたいして非常に示唆的な結果をえることができた。また関連して予想以外の発見があった。
本年度の研究から、ハトにおける視覚的注意の資源が左右の視野である程度独立していることが示された。今後、先行手がかりを二重にすることで、左右それぞれ同時に注意の焦点が存在しうるか検証する。
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