各教科教育領域の目的・目標として、これれからの国際社会において必要不可欠な「コンピテンシー」の育成を重要視する動きは、今や世界的潮流をなしている。そのような中、本研究は、ドイツ科学教育におけるコンピテンシーによる目的・目標設定の諸相を構造的に明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、本年度は次の二点を中心として研究を展開し、成果を得た。第一に、昨年度に引き続いて、KMKによる教育スタンダードの策定を受け、各州がいかなる科学カリキュラム改革を推し進めているかに関して、初等・中等教育段階を中心にその実態と特徴を明らかにした。(「コンピテシシー指向の初等科学カリキュラム―ドイツニーダーザクセン州における教科『事実教授』のカリキュラムを例として―」、平成24年度第3回日本科学教育学会研究会、及び、「ドイツ諸州における科学教育課程改革の展開―ニーダーザクセン州ギムナジウム上級段階を例にして―」、日本科学教育学会第37回年会)。第二に、昨年度明らかにしたコンピテンシーモデルの基本構造や開発動向を踏まえ、とりわけコンピテンシー段階モデルについて、フンボルト大学の教育制度における質的発展のための研究所(IQB)が開発したモデルを取り上げ、その特質を明らかにした(「ドイツ科学教育におけるコンピテンシー段階モデルの構築―IQBの取り組みに着目して―」、日本理科教育学会第63回全国大会)。コンピテンシー段階モデルは、コンピテンシーの育成プロセスを描出する上でも重要視されており、コンピテンシー指向の科学カリキュラム編成に向け、その理論的基盤を提供するものとして期待される。
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