研究課題/領域番号 |
12J01154
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小出 太郎 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 非局在型中性有機ラジカル / トリオキソトリアンギュレン / 多孔性金属錯体 / 26π芳香族性 / アニオン体 / 酸化還元 |
研究概要 |
安定な非局在型有機ラジカルであるトリオキソトリアンギュレン(TOT)を用いた多孔性有機金属錯体の合成と物性解明について研究を行っている。TOTは25π共役系を有する中性ラジカル状態と26π芳香族性のアニオン状態とを酸化還元によって容易に変換でき、それらの状態をコントロールすることによって新たな機能性発現も期待される。前年度までにTOTに金属イオンへの配位部位としてピリジル基を導入し、亜鉛錯体を合成することに成功していた。 本年度は、単結晶として得られていた亜鉛錯体について、バルクでの物性評価を行うため、固体電子スペクトル測定、粉末X線回折、固体状態の電気化学測定を行った。固体電子スペクトルから、金属錯体中のTOTは閉殻のアニオン体となっていることを確認した。粉末X線回折からも、単結晶の回折から予測される回折パターンと近い回折ピークが得られており、バルクでの純度についても良好であると判断している。固体状態での電気化学測定においては、アニオン体から中性ラジカルへの可逆な酸化還元波が観測されており、金属錯体中においてもTOTが安定に酸化還元でき、中性ラジカル状態をとりうることが示唆された。このように多孔性金属錯体の構成要素として酸化還元可能な機能性分子を導入することは錯体の機能化を効率的に行うことができ、新規材料としての可能性を広げることができる。また、安定な中性ラジカル状態を有する有機分子は未だ少なく、このような分子を金属錯体の構成要素として用いた研究は非常に斬新であり、今後の材料化学に大きく貢献できる可能性を持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに単結晶X線構造解析によって多孔性の構造を明らかにしていたTOTの亜鉛錯体について、バルクでの安定性、電子状態を明らかにし、固体状態での電気化学についても検討し錯体を形成した状態でTOT骨格がアニオン状態と中性ラジカル状態を変換できることを確認した。内部への他の分子の導入については未だ未達成であるが、今後検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた金属錯体の化学酸化により、開殻化学種を外壁部にもつ多孔性金属錯体を合成する。また、空孔内への他の分子の導入し、TOTとの相互作用について検討する。溶媒にはほぼ不溶であるため、金属錯体自身への溶媒効果による差異はあまり認められないと思われるが、他の分子導入の際に影響することが考えられるため検討課題とする。亜鉛以外の金属についても検討を進めているため、新たな金属錯体の合成と構造決定についても並行して進める。
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