安定な非局在型有機ラジカルであるトリオキソトリアンギュレン(TOT)を用いた多孔性有機金属錯体の合成と物性解明について研究を行った。TOTは25π共役系を有する中性ラジカル状態と26π芳香族性のアニオン状態とを酸化還元によって容易に変換でき、それらの状態をコントロールすることによって新たな機能性発現も期待される。平成25年度までにTOTに金属イオンへの配位部位としてピリジル基を導入し、亜鉛錯体の合成に成功し、その構造、電気化学物性などを明らかにしていた。 平成26年度には、得られた多孔性金属錯体の二次電池への応用、電気化学測定と分光測定などを組み合わせた物性測定を行った。また、TOTの配位部位として新たな置換機を導入した誘導体合成にも取り組んだ。 TOT亜鉛錯体の酸化還元能を活かし、二次電池の正極活物質としての利用について検討した。この亜鉛錯体は多次元ネットワークを形成しているため化合物の溶け出しなどの問題がなく、非常に安定なサイクル特性を示し、1000回以上充放電を行っても放電容量の大きな低下はみられなかった。さらに、TOTの置換基としてピリミジル基、フェニルターピリジル基、カルボキシル基、などの導入検討も行い、新たな金属錯体合成に取り組んだ。
現在、これまでに得られた結果を元に論文投稿準備中である。
|