研究課題
当研究室において新たに開発された赤色蛍光団TokyoMagenta類を母核として、その誘導体化とpH依存性の精査を行った。2-Me TM(TM=TokyoMagenta)にクロル原子あるいはフッ素原子を導入することによって生理的条件(pH7.4)における蛍光特性がより優れた誘導体となることを見出し、その効率的な合成法を確立することに成功した。またフッ素原子を導入した際には酸性においても大きな蛍光量子収率を示し、2-Me TMと比較して高感度なレシオ型pHプローブとなることが明らかとなった。これは今回開発を目指す受容体の内在化をとらえるペプチドタグ検出蛍光プローブの母核としても適した性質である。これらと並行して水溶性のカルボキシル基を有する2-COOH TM類の合成及びその光化学的特性の精査を行った。その結果、2-COOH TM類はTokyoMagentaの基となった緑色蛍光色素フルオレセインと比較して、スピロラクトン構造を形成しやすいという特徴的な性質が明らかとなった。そこで、2-COOH TMのpH依存性を精査し、さらに様々な誘導体との比較検討を行うことで、2-COOH TMの詳細な化学平衡式を推定することに成功した。得られた知見に基づき、ハロゲン原子を導入した2-COOH TM誘導体を合成することで、生理的条件(pH7.4)において強蛍光性の分子構造の存在比を高めることにも成功した。今回開発した新たなTokyoMagenta誘導体と、その特性を精査することで得られた知見は、ペプチドタグ検出蛍光プローブのみならず、今後多くの赤色蛍光プローブ開発に用いられ、分子細胞生物学の発展に大きく貢献すると考えている。
2: おおむね順調に進展している
蛍光プローブの母核として用いるTokyoMagenta類の特性の精査とTokyoMagenta類を母核としたpHプローブの開発に成功し、ペプチドタグ検出蛍光プローブ開発のみならず、様々な赤色蛍光プローブ開発に用いることができる有用な知見を得るに至ったため。
今回開発に成功した2-COOH TM類は細胞内で局在を示さず、水溶性が高いという、赤色蛍光プローブの母核として非常に優れた性質を有しているため、これを母核として、様々な赤色蛍光プローブの開発を行う。具体的にはペプチドタグ検出蛍光プローブに加えて、カルシウムイオン、一酸化窒素を標的とした蛍光プローブ開発を行う。これらは生理的に重要であり、緑色蛍光プローブによる検出は行われているものの、有用な赤色蛍光プローブは依然として開発されていない。これらに対する赤色蛍光プローブが開発できれば、他の生理活性物質に対する緑色蛍光プローブと併用したマルチカラーイメージングによって、これら分子の挙動を同時に解析することが可能となるため、その開発には大きな意義がある。
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Angewandte Chemie International Edition
巻: 52 ページ: 3874-3877
10.1002/anie.201210279