研究概要 |
宇宙にある銀河にはその中心に太陽の100万倍以上の質量を持った超巨大ブラックホール(SMBH)が存在すると考えられている。この超巨大ブラックホールがどのように進化してきたかを明らかにすることは現代の天文学の重要なテーマである。私の研究はこのSMBHが成長していく時の物理状態を明らかにすることである。その対象として、活動銀河核(AGN)と呼ばれる、SMBHが現在進行形で成長している天体に着目した。私はAGNのX線スペクトルを人工衛星すざくで観測し、そのデータ解析を行った。その目的は降着率の高いSMBH周辺の環境を明らかにするためである。まず、14-195keVで明るい3つのAGN (Mrk110, SWIFTJ2127, IGRJ16185)は0.25-40keVのX線スペクトルを取得し、系統的なスペクトル解析を行った。内Mrk110とSWIFTJ2127についてはSMBHを覆うコロナの電子温度が10-50keVであることを明らかにした。私はこの観測結果から、降着率の高い天体ではコンプトン冷却が効いてコロナの電子温度が低く抑えられると考えた。次に、RXJ1633と呼ばれるAGNの電波、赤外/可視光、X線による同時観測を行い、初めて得られた多波長同時スペクトルのデータ解析を行った。その結果、この天体が今回の同時観測でも電波の強度が強いAGNに属していることを確認した。また、コンプトン冷却が極端に働いてコロナの電子温度がおよそ2keVに抑えられ、円盤からの熱的放射が直接観測される非常に珍しい天体であることも明らかにした。以上の観測成果から私は降着率の高いAGNのSMBH周辺の環境を明らかにした。
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