宇宙にある銀河にはその中心に太陽の100万倍以上の質量を持った超巨大ブラックホール(SMBH)が存在すると考えられている。この超巨大ブラックホールがどのように進化してきたかを明らかにすることは現代の天文学の重要なテーマである。私の研究はこのSMBHが成長していく時の物理状態を明らかにすることである。その対象として、活動銀河核(AGN)と呼ばれる、SMBHが現在進行形で成長している天体に着目した。特に今年度は、ジェットを持つAGNであるRXJ1633+4718 (RXJ1633)とRXJ0134.2-4258 (RXJ0134)と呼ばれる天体のスペクトルを詳しく調べた。その目的はこの2つの天体のスペクトルを調べることで、SMBHとジェット、降着円盤、コロナの関係を明らかにすることである。RXJ1633では電波、赤外/可視光、X線による同時観測を行い、初めて得られた多波長同時スペクトルのデータ解析を行った。その結果、この天体が今回の同時観測でも電波の強度が強いAGNに属していることを確認した。また、コンプトン冷却が極端に働いてコロナの電子温度がおよそ2keVに抑えられ、円盤からの熱的放射が直接観測される非常に珍しい天体であることも明らかにした。一方RXJ0134に関しては、0.25-12keVのX線スペクトルが12keVのカットオフを持ったべき関数型モデル(べきの値は約2.1)で再現でき、過去の観測結果と比べて最もフラックスが高い状態であることを明らかにした。この天体のX線スペクトルはコンプトン化された黒体放射モデル、あるいは、ジェット起源のシンクロトロンセルフコンプトンモデルでできる。前者の場合、この天体はRXJ1633の様に円盤が裸の状態で見えているのではなく、コロナが一様に覆っていると解釈できる。後者の場合は、すざくで観測した時、他の成分よりもジェット成分が卓越した時であると解釈した。私はこれらの成果をまとめ、学会で報告した。
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