研究課題
12遺伝子破壊株(12geneΔHS)を元株としたERG6コンディショナル発現による多剤超感受性酵母の作製出芽酵母における主要な多剤耐性要因には薬剤排出系と細胞膜障壁がある。これまでに細胞膜上の薬剤排出ポンプを全て破壊した12geneΔHS株を作製し多剤感受性を示すことを報告してきた1)。一方、細胞膜障壁を担う成分はErgosterolであり、この合成酵素であるERG6遺伝子を破壊した株は12geneΔHS株とは異なる薬剤群に感受性を示す1)。このことから薬剤排出系と細胞膜障壁は異なったメカニズムにより多剤耐性を付与していると考えられ、12geneΔHS株のERG6遺伝子を破壊すればさらに多剤超感受性を示す酵母株の作製が可能であると考えられる。しかしながらERG6遺伝子破壊により遺伝子導入・接合・胞子形成の効率低下が生じるため酵母の大きな利点である操作性を損なってしまう。そこでERG6遺伝子のコンディショナル発現系を12geneΔHS株に導入し、薬剤を作用させる際にはERG6を発現せず、遺伝子導入・接合・胞子形成の際にはERG6を発現する12geneΔHS-iERGの作成を行った。12geneΔHS株のERG6プロモーターをガラクトースにより発現誘導可能なGAL1プロモーターに置換した。作製した株はグルコース存在下で複数種類の薬剤に対して感受性が大幅に向上し、親株と比較して最大346倍、12geneΔHSと比較して最大24倍の薬剤感受性増加が確認された。一方で、作製した株はガラクトース存在下において12geneΔHSと同程度の十分な遺伝子導入効率を示した。検討現在、接合・胞子形成の効率を検討しているところである。1)Biosci. Biotechnol. Biochem., 75,pp.1588-1593(2011)。
2: おおむね順調に進展している
当初目的としていた多剤超感受性酵母の作製に成功したと考えられるため。
作製に成功した12geneΔHS-iERGを用いて作用機構、標的分子が未知である化合物の解析を行う。それにより本株の化合物解析における有用性を示す。
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ACS Chemical Biology
巻: (In press)
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Bioorganic Medicinal Chemisty
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