研究課題/領域番号 |
12J01224
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
丸山 空大 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
|
キーワード | ローゼンツヴァイク / ユダヤ / ドイツ / ヘルマン・コーエン / マルティン・ブーバー / 宗教哲学 / 思想史 / 近代哲学 |
研究概要 |
平成24年度は、論文「後期ヘルマン・コーエンの宗教哲学とメシアニズム」を発表した。ヘルマン・コーエンは日本では新カント主義の哲学者として知られているが、彼が最晩年、ベルリンでユダヤ教の科学アカデミーで教鞭をとり、熱心にユダヤ教の事柄について論じていたことはあまり知られていない。コーエンは本研究対象のフランツ・ローゼンツヴァイクにも大きな影響を与えた人物である。ローゼンツヴァイクの背景を明らかにするためコーエンについて深く掘り下げた。コーエンが当時ユダヤ教社会のなかで代表していた立場は、ドイツユダヤ人の多数派の見解、すなわち、ユダヤ教徒のドイツ市民としてドイツ社会に同化し、キリスト教徒のドイツ人と平等な権利を獲得することを目指すリベラリズムである。リベラル派は多数派であったものの、反ユダヤ主義や、ユダヤ人内部からの民族主義の表出としてのシオニズムの台頭といった情勢のため、イデオロギーとしての影響力は低下していた。コーエンは、このリベラル派の最後期の論客であった。本論文では、非政治的なカント学者、体系哲学者であったコーエンが、晩年にユダヤ教に基づく宗教哲学を自らの主要な課題とするに至るまでの経緯を、彼の著述における宗教理解の変遷を追うことで明らかにし、これまで知られてこなかったコーエンの最晩年の宗教哲学の内容を彼の体系哲学的な著作との連関において解明した。この論文は自身多くの葛藤を抱えながら、リベラル派としてコーエンの最期を看取ったローゼンツヴァイクの思想を研究する際の重要な前提となる。 また、ローゼンツヴァイクの「祈り」概念の変遷を青年期から晩年にかけて詳しく研究した。トロントで行われた国際ローゼンツヴァイク学会では、この内容について発表を行い、本研究課題である『フランツ・ローゼンツヴァイクの後期思想研究』の意義を世界のローゼンツヴァイク研究者に問い、彼らと有意義な意見交換を行うことが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
つつがなく史料を収集したり、出張したりすることが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は計画通り順調に進捗しているため、方針に変更はない。これまでどおり、史料の収集と分析に取り組み、結果を学会発表や学術雑誌で発表してゆく。平成25年度は日本宗教学会、京都ユダヤ思想学会での発表を予定しており、後者の学会誌に論文を投稿する予定である。
|