研究課題/領域番号 |
12J01224
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
丸山 空大 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ローゼンツヴァイク / ユダヤ思想 / ドイツ・ユダヤ / 宗教哲学 / コーエン / 思想史 / ブーバー / ユダヤ教の本質 |
研究概要 |
平成25年度は、ローゼンツヴァイクの後期思想の特質を際立たせるために、彼の初期思想を詳しく検討した。当初、ヘーゲル的な歴史哲学を構想したローゼンツヴァイクが、キリスト教への改宗の決断(そしてその撤回)をきっかけに、この構想を神学的な救済史へと組み替えていく過程を明らかにした。その際、後期思想に特徴的な、実存的な個人と神との対面性にかかわる問題系が、すぐには理論化できない問題として保留されているのを確認した。これらの成果のうち一部をまとめ、6月に京都ユダヤ思想学会において発表を行った。また、その内容をさらに洗練させ同学会が刊行する雑誌『京都ユダヤ思想』に投稿し、現在査読中である。 また、ローゼンツヴァイクの思想研究と並行して、彼の思索や活動の背景となった、同時代のドイツにおけるユダヤ系知識人の論壇の状況にっいても研究を進めた。特に、20世紀初頭におこった「ユダヤ教の本質」をめぐる論争に着目し、この論争に参加した様々な派閥の見解を比較した。先行研究で注目されることのなかった、正統派やシオニスト、東ヨーロッパのユダヤ人の見解を取り上げたのが本研究の特色である。この比較研究を通して、当時起こっていた、改革派の求心力の低下とユダヤ・ナショナリズムの屈折した高揚を明確に描き出すことができた。この成果をまとめ、9月には日本宗教学会で発表を行った。また、論文「「ユダヤ教の本質」をめぐる論争と世紀転換期のドイツ・ユダヤ教」を書き、『一橋社会科学』誌に投稿、査読の結果掲載を許可され、近日刊行予定である。さらに、この論争の中でヤーコブ・フローマーという人物がベルリンの共同体でひき起こした騒動を取り上げ、平成26年2月ドイツ民族主義宗教運動研究会において「エリアス・ヤーコブ事件と20世紀初頭のドイツ・ユダヤ人の自己理解」の題目で発表を行った。この事件には当時のドイツ・ユダヤ教の様子が非常によく反映されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「ユダヤ教の本質」をめぐるを詳細に見ていく過程で、ローゼンツヴァイクと同時代のユダヤ教分離正統派の論客イザーク・ブロイアーという人物を見出した。ローゼンツヴァイクと似た問題関心をもちながら全く異なる答えを導き出したプロイアーはローゼンツヴァイクの格好の比較対象となると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、ローゼシツヴァイクの後期思想に関する研究をまとめる。その際、上記(11.)のブロイアーとの比較を通して(そして、平成24年度までに研究していた、ヘルマン・コーエンやマルティン・ブーバーとの比較を通して)、ローゼンツヴァイクの思想の特徴を明らかにする。
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