研究概要 |
不適切な灌概・排水システムと作付け体系によって引き起こされる土壌や地下水の塩類化の問題が発生している砂漠化進行地域においては,生物的および物理的手法による根圏の適切な塩類動態制御に基づく持続畑作管理技術の確立が急務とされ,そのためには,土壌中の物質移動解析の精度を向上させることが重要となる。本年度では,中国の乾燥地に位置する塩類化が進行している実験圃場において,物質移動解析を実施することとした。現地の主要作物であるトウモロコシ,耐塩生作物として塩害農地の除塩が期待されるビートを栽培し,物質移動解析結果と比較・検証することができる情報を得るため,その成長に伴う土中水分・電気伝導度(EC)の経時変化をTDR(time domain reflectometry)法を使ってモニタリングした。その結果,現地圃場では作付け期間全体を通して,作土層の浅い領域まで高水分状態が続くことを明らかにした。また,降水・灌概時にECの値が急激に上昇する変化が確認できた。Rhoadesら(1976)が示したモデルから推定した土壌溶液EC値から,この変化が土壌水分の増加によるものではなく,塩分濃度の上昇によるものであることを明らかにした。これらの知見と同時に,解析結果と比較・検証することができる現地データを得ることができた。次に,ビート植生条件における,土中の水分移動解析を実施した。移動解析の際に境界条件として与える蒸発フラックスと蒸散フラックスを,FAOの二元作物係数法(dual crop coefficient method)を用いて推定し,地下水位と降水量の観測値と同様に変動境界条件として与えた。その結果,観測値と解析値との間に体積含水率で5%程度の誤差が生じたが,グラフの形はおおむね一致し,解析による水分移動の再現の可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題の推進方策として,以下のことを計画している。 1.現地調査を本年度より頻繁に実施する。善 2.必要な土壌サンプリングを実施し,土壌の水分保持特性や溶質の移流分散特性を室内実験で明らかにし,水分移動解析の精度向上,溶質移動解析のパラメータの推定を実施する。 3.栽培作物する作物の種類を増やし(ひまわり,燕麦を予定),本年度同様土壌水分・塩分モニタリングを実施する。 4.植物の生育状況を詳細に記録し,土壌・植物サンプリングなども踏まえ,塩害の改善に最適な作物の選定を実施する。 5.取得データが莫大になるので,研究結果を随時論文としてまとめ,効率化を図る。
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