研究概要 |
本年度は主に, (1)メタンハイドレートの分解を考慮した海底地盤の系の線形安定解析, (2)CO2ハイドレート含有地盤模擬供試体の分解実験を行った. (1)メタンハイドレートの分解を考慮した海底地盤の系の線形安定解析 まず, メタンハイドレート分解による水と気体の発生, 分解に伴う温度変化, さらに地盤の変形を考慮した支配方程式の定式化を行った. 解くべき方程式は, ①カのつり合い式, ②水・気体の連続式, ③エネルギー保存式, ④メタンハイドレート分解速度式, ⑤土骨格の構成式であり, 未知数は水圧P^W, ガス圧P^G, ひずみε, 温度θ, MH物質量N_Hである. これらの未知数に対して方程式を満足する成分と微小なゆらぎ成分を考え, このゆらぎが成長し解が発散するか収束してつり合いを保てるかどうかを検討した, この安定解析の結果, 特にメタンハイドレート分解速度溺大きい場合, 及びひずみ軟化性材料の場合に地盤が不安定化するという結果を得た, さらに本研究では有限要素解析によってもメタンハイドレート分解速度が大きくなればなるほどハイドレート分解時に間隙水圧, 間隙ガス圧ともに大きく増加し, それに伴い土骨格に働く応力が著しく低下し解が発散するという結果を得た, またひずみ軟化性材料の場合, 硬化性材料と比較して大きな変形が生じた. 以上より, 有限要素解析と線形安定解析による結果は整合性を見せた. (2)CO_2ハイドレート含有地盤模擬供試体の分解実験 次にCO_2ハイドレート含有模擬試料を作製し, 非排気非排水状態で加熱法によりCO_2ハイドレートを分解させ, 分解時の圧力変化及び変形挙動にっいて調べた, 豊浦砂供試体内にCO_2ハイドレートを生成させ後に間隙中に蒸留水を通水させ, より実際の海底地盤に近い条件で実験を行うことに成功した. 本実験から, ハイドレート飽和率力塙いほど間隙圧力の上昇が大きくなること, CO_2ガスの液化によって間隙圧力が大きく減少すること, 比較的拘束圧が大きい場合でも分解時の間隙圧力の増加により有効拘束圧が著しく低下するという結果を得た. このように分解実験中の温度圧変化を計測した実験例は少なく, ハイドレート生産時の地盤の安定性を検討する上で重要な実験結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO_2ハイドレート含有砂供試体の飽和化に成功し, より実際の海底地盤近い条件下で実験することが可能になった. 非排気非排水条件でハイドレート分解時の間隙圧力の上昇を計測した例は少なく, メタンハイドレート産出中の海底地盤の大変形や地すべりなどの可能性を検討する上で重要な実験結果だといえる. 実験のみならず, 理論解析及び数値シミュレーションによってもメタンハイドレート分解時の海底地盤の安定性を検討しており, これまでに報告されている実験結果やシミュレーション結果を理論的に示す結果を得た. 複雑な現象の解明に対して包括的かつ精緻なアプローチを行っている.
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今後の研究の推進方策 |
実験に関しては, 分解時の温度変化及び間隙圧力変化の精緻な計測に成功しているが, 分解時の供試体の変形については試験装置が改良段階にあり計測できていない. 特にハイドレートが分解するとガスが発生するために供試体は不飽和状態になる. ガスが存在する状態では気体の圧縮性が大きく体積ひずみの計測が困難である. 今後はこの不飽和状態の供試体の変形を計測する手法を確立していく. また実験と並行して, 数値シミュレーションによる海底地盤の変形挙動予測についても研究を進めていく. ハイドレートを含有する供試体では, 非含有供試体と比較して粘塑性挙動が顕著になるという報告がなされている. 既存の構成式では粘塑性パラメータのハイドレート依存性は考慮されておらず, 改良が必要だと考える. これによってハイドレート含有地盤の時間依存性挙動を再現することが可能となり, 長期的な変形を予測することが可能となる.
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