研究課題/領域番号 |
12J01276
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 大 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 四辻善成 / 河海抄 / 注釈書 / 享受史 / 源氏学 / 源氏物語 / 花鳥余情 |
研究概要 |
本年度は、四辻善成の源氏学の集成である『河海抄』について、諸本調査を行うとともに、注釈が施される過程やその背景について考察を進めた。本年度は、巻九と巻十一の注記内容を対象として『河海抄』の諸本を検証しなおし、諸本整理の方法、および注記における増補改訂の過程を示した。 巻九に関しては、諸本を注記内容によって検証した結果、三系統とその他という四分類が可能でることを明らかにした上で、注記増補の特徴に迫った。この成果については、論文「『河海抄』巻九論一諸本系統の検討と注記増補の特徴一」としてまとめ、『中古文学』第91号(2013・5予定)に掲載されることが内定している。 巻十一に関しては、注記に引用される『李部王記』の問題を踏まえつつ、諸本系統について再考を加えた。この成果として、第245回大阪大学古代中世文学研究会において「『河海抄』巻十一における諸本系統再考」と題する発表を行った。 また、平成24年8月に行った東北大学大学附属図書館での調査では、戦禍によって行方不明となっていた旧制第二高等学校旧蔵『河海抄』を確認することが出来た。この旧制第二高等学校旧蔵本の特徴および諸本間における位置付け等については、論文「東北大学附属図書館蔵旧制第二高等学校旧蔵『河海抄』をめぐって」(河添房江編著『古代文学の時空』、翰林書房、2013・8予定)にて報告予定である。 この他に、四辻善成の源氏学がどのように展開し、同時代以降どのように享受されていったかを明らかにすべく、学会発表(第4回大阪大学・チュラーロンコーン大学日本文学国際研究交流集会、「『河海抄』の『宇津保物語』引用一音楽関係記事を中心に一」、2013・3・21)、論文投稿(「『花鳥余情』『伊勢物語愚見抄』の後人詠注記-歌学から物語注釈への-過程-」、『詞林』第52号、大阪大学古代中世文学研究会、2012・10)を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、『河海抄』の諸本系統を明らかにする上での、足掛かりとなる研究成果を発表することが出来た。また四辻善成の源氏学の形成に関わる、いくつかの事象について、その要因や背景についての調査を行うことが出来、次年度以降に学会発表・論文としてまとめることが期待出来るため。
|
今後の研究の推進方策 |
『河海抄』の諸本系統については、次年度も継続して各地の文庫調査を行うとともに、他の巻における系統分類について検証を加えていく。また本文系統の分類と並行しながら、『河海抄』の注記が作成されていく過程について、その要因や時代的背景を踏まえつつ、考証していく。具体的には、『年中行事歌合』との接点を明らかにする。さらに、後世の『源氏物語』注釈書に『河海抄』が与えた影響についても考察を加える。具体的には『湖月抄』を中心に行う予定である。
|