本申請課題では、生物システムの自己組織化モデルにもとづいて自己組織型のネットワーク制御を実現する際に直面する、以下の3つの問いに答えることのできる基礎理論を確立する。 ① どのような特性を持つ生物モデルが自己組織的なネットワーク制御に適用可能か ② どのような特性を持つネットワーク制御の課題が生物モデルを適用することで解決可能か ③ 生物モデルをネットワーク制御に適用するためにはどのような変更,拡張が必要となるか 最終年度である平成26年度の研究では、自己組織型ネットワーク制御の設計方針の策定に取り組んだ。自己組織型ネットワーク制御の頑健性は秩序化を促すエネルギー(秩序化エネルギーと呼ぶ)と乱雑化を促すエネルギー(乱雑化エネルギーと呼ぶ)による影響を受けて決まる。自己組織型ネットワーク制御を設計する際には「想定するネットワーク変動の度合いに応じて、自己組織型ネットワーク制御がどの程度の性能を発揮する必要があるのか」という観点から両エネルギーのバランスを適切に設計する必要がある。しかしながら、既存の自己組織型ネットワーク制御の研究成果の多くは両エネルギーを明確には区別できておらず、両エネルギーのバランスの設計の仕方についても議論できていなかった。そこで、平成26年度の研究では、自然界の物質の両エネルギーのバランスが自由エネルギーによって議論されていることに着想を得て、自己組織型ネットワーク制御の自由エネルギーの観点から両エネルギーのバランスを設計するアプローチを検討した。
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