• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

CO2ナノバブルを用いた廃コンクリートの全量リサイクル技術に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 12J01319
研究機関東京大学

研究代表者

金 翰[シク]  東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)

キーワード再生骨材 / 二酸化炭素 / 炭酸化 / 超微細気泡
研究概要

コンクリートの炭酸化現象に着目し,二酸化炭素の有効利用,セメント系廃材の再資源化手法の開発を目指しており,その手法において超微細気泡(ナノバブル)の適用を試みている.まず,炭酸化改質による組織の緻密化手法において,セメント硬化体に二酸化炭素をガス(気相)とミリバブル(液相),ナノバブル(液相)で供給した結果,ナノバブルの方がガスに比べ若材齢において1.9~2倍程度早く反応する傾向にある.また,液相中でもナノバブルの方がミリバブルに比べより早く反応している.これは,ガスは溶解度が低いので,水中に溶解しにくく,液相である炭酸水はイオンが飽和状態であるので,炭酸イオンの濃度差によって反応速度が増加しているためと考えられる.また,ナノバブルはガスを含む微細気泡を水中に保持しており,その気泡は自己加圧敷果によって水中で収縮・消滅し,その大部分が水中に解離するので,ナノバブルが結果的により多くの量の炭酸イオンを供給することが原因として挙げられる.よって,ナノバブルの適用によって二酸化炭素が再生骨材の表面から遷移帯まで早く侵透し,急速に反応することから,二酸化炭素の固定化敷率と炭酸化改質効率が両方向上したと言える,炭酸化改質による組織の脆弱化手法において,水中に二酸化炭素をミリバブルとナノバブルで供給した結果,ナノバブルの方が脆弱化性能が増加する傾向である.これは上述したようにナノバブルの応用から水中により多くの量の二酸化炭素を解離できることが理由として挙げられる.また,緻密化手法においては試験体を封緘することから,大気中に暴露した試験体に比べ緻密化敷率が向上する傾向である.本脆弱化手法は,攪拌作用による分子間の有敷衝突数の増加による反応速度上昇現象と考えることができ,緻密化手法は限界反応物である炭酸水の逸散抑制敷果による反応速度増進現象と考えられる.これまでの研究結果を元にし,再生細骨材の再資源化・実用化に向けた実験を行った結果,ナノバブルとして炭酸ガスを供給することはペースト脆弱化に寄与することが分かった.更に,炭酸ガスをナノバブルとして供給すると,直接バブリングするよりも約35%のペースト剥離性状改善につながる.また,物理的なアプローチと化学的なアプローチを交互に繰り返し処理を行うことにより,再生細骨材のセメントペーストからカルシウム成分を溶脱させペースト付着率を12.88%まで低減させることに成功した.この結果はこの処理を繰り返す,もしくは同じ時間の処理でも繰り返し回数を増やすことで更なる改善が見込める,また,大気環境で劣化を受けず,付着ペーストが多量存在する低品質再生骨材において,付着ペーストの炭酸化改質による再生細骨材の品質改善の実現可能性に関する糸口を捜した.なお,この手法を適用した改質モルタルの力学特性と耐久特性を検討した結果,炭酸化改質再生細骨材を用いたモルタルが一般再生細骨材を用いたモルタルに比べ圧縮強度が増加する傾向にあることを分かった.これは,付着ペーストの組織が炭酸化によって緻密化し,それにより強度が向上しているためと考えられ,材齢が経過するに従って一般再生モルタルに比べ圧縮強度が持続的に増加することから,長期材齢においても炭酸化改質による有効細孔空隙の充填効果が力学特性の効率向上に寄与することを分かった.以上の結果から,再生骨材の品質・性能改善および経済性・エネルギー効率が高い資源循環システムを構築することに成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画では炭酸化現象に着目し,炭酸化改質による組織の緻密化手法および脆弱化手法による再資源化手法の開発を目指していた.しかしながら、セメント系材料は自然環境で劣化し水和物が分解するので,再生骨材を構造用コンクリートに利用するためには材料の保管法や修復手法などが必要になる.このような背景から,長期間の炭酸化から分解した水和物を修復する手法を開発し,修復性能に対して検討した結果,分解した水和物が修復して行く結果を得られた.その結果から,分解したセメント硬化体に修復手法を適用することによって,再生骨材の品質を向上することがわかる.

今後の研究の推進方策

本研究では実験室レベルで検討を行っているため,実用化には実現場レベルでの技術適用のための最適プロセスの構築などの検討が必須不可欠である.そのため,技術の実用化に際してのナノバブル発生装置の適用による機械的問題や改質性能を極大化できるプロセス的問題などの様々な問題点に対する検討が必要であると言える.また,炭酸化改質骨材は多くの水酸化カルシウムを炭酸化反応に消費しているので,骨材の中性化による鉄筋コンクリートの鉄筋腐食や中性化速度などの耐久特性に対して検討する必要があると考えられる.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 炭酸ナノバブル水を用いた低品質再生細骨材の再資源化に関する基礎的研究2012

    • 著者名/発表者名
      金 翰〓、北垣亮馬、野口貴文
    • 雑誌名

      日本建築学会関東支部査読付き研究報告集

      巻: 第7巻 ページ: 21-24

    • 査読あり
  • [学会発表] Fundamental Study on the Carbonation of Recycled Fine Aggregate Using Carbonated Nanobubble Water2012

    • 著者名/発表者名
      Han-sic Kim, Ryoma Kitagaki, Takahumi Noguchi
    • 学会等名
      Asian Concrete Federation
    • 発表場所
      Chonburi, Thailand
    • 年月日
      2012-10-25
  • [学会発表] コンクリート細孔溶液中における炭酸カルシウムの析出に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      金 翰〓、北垣亮馬、野口貴文
    • 学会等名
      日本建築学会
    • 発表場所
      名古屋大学, 愛知県
    • 年月日
      2012-09-13

URL: 

公開日: 2014-07-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi