研究課題
当初予定していた損傷患者を対象とした実験は統計検定に十分な人数の患者からのデータ取得が短期間では難しいことが判明したため、今年度はTMS(経頭蓋磁気刺激法)という脳部位の活動を一時的に抑制する装置を用い実験を行った。TMSは健常者の脳機能を非侵襲的に抑制することが可能なため"Virtual lesion (仮想的損傷)"を作ることができるとも言われており、損傷患者を対象とした実験と同様に「ある脳部位と行動との因果関係」について検討することが可能である。今年度は前年までに行ったfMRI研究から得られた「pMFCという脳部位の活動と認知的一貫性を低減するための態度変化(lzuma et al., 2010, 2013)」について、さらにそれらの因果関係について検討するために、TMS刺激をpMFCに与え態度変化を測定する実験を行った。昨年夏頃からカリフォルニア工科大学で開始したが装置のトラブルなどのためデータ収集が予定より遅れており、現在も実験の途中である。現在約30名からデータを取得しており、2014年度にあと15-20名の被験者追加を予定している。昨年6月に両側 Amygdala 損傷患者一名からのデータ取得も行ったがクリアな結果が得られなかった。現在課題の改良などを検討中である。さらに2014年2月より、個人の様々な社会的対象に対する態度をfMRIと機械学習を使うことによって明らかにすることを目的とした新しいfMRI実験を開始している。
2: おおむね順調に進展している
損傷患者を対象とした実験は当初の予定通り行うことが難しくなったが、その代わりにTMS装置を使った実験を行っており、データ収集の目処も立っている。またカリフォルニア工科大の他の研究者が使っている機会学習という手法を社会性神経科学に取り入れることによる新しい試みも始めており、面白い成果が期待出来る。またこれまで行った態度変化に関するfMRI研究も総称論文にまとめ発表することが出来た(Izuma, 2013)。
今後はTMS研究のデータ取得を行い、データ解析を経て論文執筆に取りかかる。同時に機会学習とfMRIを使った脳活動から社会的態度を予測する研究にも着手していくことを予定している。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Current Opinion in Neurobiology
巻: 23 ページ: 456-462
10.1016/j.conb.2013.03.009
Cerebral Cortex
巻: (印刷中)
10.1093/cercor/bht317
Journal of Neuroscience
10.1523/JNEUROSCI.4427-13.2014