研究課題/領域番号 |
12J01360
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米田 友貴 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 環拡張ポルフィリン / ヘキサフィリン / 集積化 / 転位反応 / デカフィリン / メビウス芳香族性 |
研究概要 |
今年度は、前年度から続き、集積化の原料となるヘキサフィリンパラジウム錯体の反応性について深く追究し、これらをChem, Eur. J誌にまとめた。 また環拡張ポルフィリンそのものの高次化にも取り組み、10個のピロールユニットから成るデカフィリンの化学についての研究を行った。10個のピロールユニットからなるその巨大な共役系の柔軟な構造による興味深い性質が期待されている。しかしながら、その合成の困難さからその金属錯体の化学の発展は十分ではなかった。そこでその原料合成を改良し、グラムスケールで[44]デカフィリンを得ることに成功した。この[44]デカフィリンに対してO価のパラジウム源であるPd2 (dba) 3によるパラジウム錯化を行うことで、[46]デカフィリンパラジウム(II)単核錯体を得た。この錯体は分子全体でねじれを持たない0°ねじれ系であり、明確なヒュッケル芳香族性が観測される芳香族アヌレンの中では最大級のものである。この[46]デカフィリンパラジウム錯体を酸化することにより、[44]デカフィリンパラジウム錯体を得た。この[44]デカフィリンパラジウム錯体は、反応直後は速度論的生成物である360°ねじれを有したヒュッケル型非芳香族化合物が優先的に得られるhS、溶液中で遅い平衡により180°ねじれを有した熟力学的生成物であるメビウス芳香族錯体に変化することを見出した。このメビウス型錯体は、メビウス分子の中で最大の44π共役系を有する。このことから、最大のヒュッケル芳香族系に匹敵する大員環のアヌレンにおいても十分にメビウス芳香族性を発現可能であることが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
環拡張ポルフィリンそのものの高次化に成功しており、デカフィリンの化学を大きく高める事に成功した。このデカフィリンにおいては、その巨大な環状共役系を活かしたこれまでに報告例のない骨格の世界最大のメビウス芳香族性が発現されており、これらは当初の想定を越える結果である。
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今後の研究の推進方策 |
高次環拡張ポルフィリンであるデカフィリンの化学をさらに推進する。さらなる多様な金属による錯化やより巨大な環拡張ポルフィリンの化学にも取り組み、これまでの環拡張ポルフィリン化学の常識を覆す金属錯体の合成を試みる。また、その過程でさらに興味深い反応や現象を見つけることができれば、方針を柔軟に変更してそれらについても研究を進めていきたいと考えている。
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