研究課題/領域番号 |
12J01379
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神吉 雅崇 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 離散可積分系 / 有限体 / 離散力学系 / セルオートマトン / 超離散可積分系 / 離散パンルヴェ方程式 |
研究概要 |
本年度は、当初の研究目的に沿って、可積分系とよばれる非線形であるが性質の良い対称性を持つ方程式群の一般解の研究を行った。同時に、方程式の普遍的な性質を表現する保存量について考察した。特に空間変数が整数値のみをとる離散可積分系、および空間と時間両方の変数が整数値をとる超離散可積分系、それぞれを考察し、また両者の関係を研究した。 本年度の研究成果は、離散系を有限体上で下記のように適切に定義することによって、超離散系およびセルオートマトンを構成でき、ソリトン解や背景解を包括的に取り扱うことができたことである。一般に、有限体上の方程式系は不定性を持ち定義が困難である。そこで本研究では、可積分系分野に算術的力学系の理論を取り入れることにより、p進数体を用いる手法によって方程式系の不定性を解消し、有限体上の系を定義した。具体的には、先の手法により具体的な離散可積分系(離散パンルヴェ方程式)の解を有限体上で構成し、当該結果に関していくつかの学会発表を行った。研究にあたっては、理論的な一般式の構成にとどまらず、数値計算により解の大局的な性質を把握するよう努めた。 さらに、方程式をp進数体上と有限体上の両方で時間発展させることで得られる図式の可換性が、離散系の可積分性判定基準となることを見出し、結果が査読付き雑誌に掲載されたことは研究実施計画を上回る達成度であった。 本研究のアイデアは他の離散可積分系(離散KdV方程式、離散戸田方程式、離散sine-Gordon方程式など)の有限体上での定義、特異点構造の調査、そして初期値問題の解決に応用できると考えられる点においても、数理科学分野において意義を持つものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的である、離散可積分系のソリトン解や背景解の一般的な式を構成できたのみでなく、有限体上の系の可積分性を考察することで、超離散系を従来とは異なる手法で構成できるようになったという成果があり、それらの結果を論文にまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、引き続き超離散可積分系の一般解を研究していく。そのために、従来のように解を区分線形函数の和で表現する手法に加えて、有限体上の離散可積分系の特異点構造を調査することによって超離散系の解を構成する。具体的には離散KdV方程式と離散戸田方程式、そしてそれぞれの超離散類似物を考察する。さらに拡張としてp進数体の拡大体などの非アルキメデス的対象の上で可積分方程式を構成する統合された手法について研究を行う。また保存量の値が方程式の時間発展に及ぼす制限について考察し、時間発展パターンの多様性について研究する。
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