研究課題/領域番号 |
12J01382
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長久保 白 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 弾性率 / ダイヤモンド / 同位体効果 |
研究概要 |
宝石として有名なダイヤモンドは実は優れた特性を数多く示すため工業的にも非常に重要な材料の一つである。例えばその優れた特性の一つとして全材料中で最も"硬い"という特徴がある。材料を加工するためには加工したい材料よりも硬い工具を用いなければ材料加工を行うことはできない。そのためダイヤモンドは様々な材料を加工するために工業的に応用されており、加工効率を上昇させるため、さらに硬い材料開発を行うためにダイヤモンドの硬度を上回る材料を開発する必要に迫られている。 その"硬さ"にまつわる重要な材料特性の一つに弾性率というものがある。これは材料の変形に大きくかかわる物性値の一つで、この弾性率が高い材料ほどより硬い材料ということに相当する。そして近年、このダイヤモンドの弾性率を上回るダイヤモンドの人工合成に成功したという報告がなされた。ダイヤモンドは炭素原子(C)によって構成されており、自然界には同位体炭素として質量数が異なる^<12>Cと^<13>Cがおよそ99:1の割合で安定に存在している。この通常は1%しか含まれていない^<13>Cの割合を人工的に増加させて合成したダイヤモンドは通常のダイヤモンドを上回る弾性率を誇るかもしれないという報告があり、我々もレーザー光を使った弾性率計測を行った。その結果、従来の報告とは弾性率の変化量もその変化傾向も異なる挙動を示すということを発見した。我々の計測結果は精度・再現性の点においても信頼の足るものであり、単純な理論では説明できない点も多々含まれており、これは今後の材料開発と学術的関心が高く集まるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験的に定量的・定性的に新しい発見をするところまで至ったほか、この研究課題において培った計測技術を応用しその他にも重要な機能性材料の弾性率計測を行うことができた。そのため当初の計画以上に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、このダイヤモンドの同位体効果についてはその理由の根幹を探るところがポイントとなる。そしてそれは我々の知識だけでは簡単に解決できないことも予想される。我々は主に計測と音響物理学を専門としてきたが、この問題を乗り越えるためには他分野の量子論・量子物理の専門家の知恵も拝借する必要に迫られると考えられる。そのため今後は計測制度の改善・改良に努める一方で、他分野の先生方との意見交換や勉強会も大切にしながら未知の理論の確立に努めたい。
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