研究概要 |
中性子過剰な不安定核特有の物理の一つにダイニュートロン相関というものがある。これは自由空間では非束縛な二中性子が中性子過剰核表面付近などにおいて強い空間的相関をもちコンパクトなスピン一重項対 : ダイニュートロンを形成しうるというものである。これまでの先行研究では既存の枠組みの適用限界からごく一部の原子核しか研究されておらず、その普遍的な性質は全く分かっていない。今年度はまず^8He(^4He+4n)の基底・励起状態における一つもしくは二つのダイニュートロン形成の寄与を解析した。基底状態においては一つのダイニュートロンが形成される成分は非常に重要であるが、一方でダイニュートロンは、例えば芯からのスピン軌道力などによって、崩されやすくもあるために二つのダイニュートロンが同時に形成される成分は大きく抑制されることを明らかにした。また励起状態においては、二つのダイニュートロンがそれぞれボソンとして最低のS軌道を占め、空間的に大きく発達したいわばダイニュートロン凝縮状態が存在することを示唆した。続いて^9Li, ^<10>Beの基底状態において、芯の構造がダイニュートロンの形成・崩れにどのような影響を及ぼすのかを解析した。^9Liよりも^<10>Beの方が芯と余剰中性子問の引力が強く、またそれらの間に働くスピン軌道力も大きいため^9Liよりも^<10>Beの方がダイニュートロンはより大きく崩されることをあらわに示した。芯の構造の違いによってダイニュートロンの形成の度合いが異なるという事実は、今後の研究にも繋がりうる重要な示唆である。また^9Li, ^<10>Beにおけるダイニュートロン相関とそれらの鏡映核である^<9,10>Cにおけるダイプロトン相関を比較した。ダイプロトンは、二陽子間に働くクーロン力のために、ダイニュートロンに比べサイズが大きくなりやすいことを示し、その違いはより束縛の弱い不安定核でより顕著に表れうることを示唆した。
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