研究概要 |
本研究の目的は,深紫外領域における顕微分光法の確立により,高Al組成AlGaN/AlN量子井戸のキャリアダイナミクスと結晶構造の詳細な相関を解明することにある. ・高Al組成AlGaN/AlN量子井戸におけるマクロPLスペクトルの励起強度依存性 マイクロ領域における議論の前段階として,マクロPL測定によって高Al組成AlGaN/AIN量子井戸の光学特性を調べた.特にキャリアの発光機構は励起強度によって大きく変化するので,スペクトルの励起強度依存性を主に議論し,その内容を秋季応用物理学会で発表した. ・共焦点顕微鏡による深紫外領域マイクロPL測定法の確立 深紫外領域では未だ確立されていないマイクロ肌測定系の構築を行った.対物レンズには,色収差が発生しない反射対物レンズを用いた.また,対物レンズに対する入射ビームの最適化を行い,空間分解能を2μmまで高めることができた.次に共焦点系を組み,高Al組成AlGaN/AlN量子井戸を励起し,深紫外領域においてマイクロ領域のPLマッピング像を得ることに初めて成功した.PL強度と発光波長の相関を見ると,PL強度が強いほど長波長側で発光するという正の相関が見られ,ポテンシャル揺らぎの影響を受けたことによるものであると結論した.以上の議論を国際シンポジウム,春季応用物理学会で発表した. ・深紫外領域における近接場光学顕微鏡(SNOM)測定法の確立に向けた光源の構築 マイクロPL測定の次の段階として,さらに高分解能を誇るSNOMの測定系構築の構想を練った.上記の測定で用いた励起光源は繰り返し周波数が1kHzと低く,1パルスあたりのエネルギーが大きいため,SNOM測定に用いるファイバープローブの損傷が避けられなかった.そこで,繰り返し周波数が80MHzであるピコ秒Ti:sapphireレーザの第4次高調波発生装置(~210nm)を自作した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度一番の目標であった,マイクロPL測定系の構築および高Al組成AIGaN/AIN量子井戸に対する実測定を行うことができたことが大きい.また,その内容を学会で発表するにまで至った.マクロ測定からも,基本的な光学特性を知ることができた. SNOM測定系構築に関しては,根本である光源の問題を解決した. 今年度は投稿論文がないため,(2)とした.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度構築したSNOM対応のレーザは,もちろんマクロ,マイクロ測定にも使用可能である.したがって,これまで困難であった弱励起測定,量子井戸の選択励起測定を新たに行うことが可能となったため,より詳細な光学特性の議論を行い,引き続きキャリアダイナミクスを議論する. また,深紫外領域対応のマイクロPL測定系構築により,二光子励起測定などの応用測定も可能となったため,当初の予定に加え,応用測定も行う. SNOM測定系に関しては,現在深紫外領域対応のファイバーを取り寄せており,まずはレーザの透過特性を調べる予定である.測定系の構想は既に練られており,光学部品を揃え次第,系の構築を行う.
|