研究概要 |
昆虫の脱皮・変態を司るステロイドホルモンであるエクジソンが、成虫の概日リズムを制御する可能性についてキイロショウジョウバエ成虫を用いて検討した。 エクジソン生合成酵素遺伝子Shroud, Phantom, Disembodied, Shadow, Shadeが成虫脳内において異なる細胞にて発現していることを免疫染色にて確認した。また、定量PCR法でもこれらの遣伝子が成虫頭部で発現していることを確認した。Neverlandは、成虫頭部での定量PCRによる発現は認められたものの、抗体染色による発現細胞の同定まではできなかった。 幼虫期においては、すべてのエクジソン生合成酵素は前胸腺とよばれる内分泌器官の細胞で発現していることが示されている。しかし今回の成虫脳内における発現解析の結果から、単一の細胞においてエクジソン生合成酵素が発現しているわけではないことが明らかとなった。このことはショウジョウバエ成虫脳内におけるエクジソン生合成は単一の細胞内で行われるのではなく、エクジソン生合成の中間産物が脳内の細胞間を移動して、最終的にエクジソンへと変換される可能性を示唆している。 現在までにエクジソンがショウジョウバエ成虫において存在することは示されていたが、明確な生合成器官は卵巣以外では明らかにされていなかった。今回の研究は、ショウジョウバエ成虫脳内においてエクジソン生合成が行われている可能性を示唆する初めての成果である。
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