研究課題/領域番号 |
12J01445
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 惠雅 日本女子大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 味覚嫌悪記憶 / 消去記憶 / テストステロン / アンドロゲン受容体 / 性成熟 |
研究概要 |
性成熟前後の雄マウスに、味覚嫌悪学習後に消去記憶を獲得させ、一か月後に消去記憶を想起させると、性成熟後に学習を行ったマウスの方が消去記憶を強く保持する。この結果から、性成熟期に消去記憶保持機構の成熟の臨界期が存在すると予想した。本研究は、消去記憶保持機構の成熟に対する雄性ホルモン(アンドロゲン)の一種であるテストステロンの作用を明らかにすることを目的とする。本年度は、消去記憶関連脳部位に対するテストステロンの作用時期の検証を行った。 性成熟前から性成熟後の正常な雄マウスの血中テストステロン濃度を測定した結果、性成熟前の4~5週齢で一過性に上昇する傾向がみられた。そこで、RT-PCR法やreal-time PCR法を用いて、消去記憶の関連脳部位におけるテストステロン受容体(アンドロゲン受容体,AR)の遺伝子発現量を性成熟前後で比較した。その結果、性成熟前でみられる一過性のテストステロン分泌に伴い、関連脳部位で顕著なAR遺伝子発現がみられた。さらに、行動実験を用いて、異なるテストステロン投与時期が消去記憶保持に及ぼす影響について検証した結果、性成熟前のテストステロン曝露は消去記憶保持を強化するが、性成熟後の暴露は効果がないことが明らかとなった。以上の結果は、消去記憶保持機構の成熟にとって、性成熟前のテストステロン曝露が重要であることを示唆する。これらの成果を、国内外の学会や国際学術雑誌で公表し、日本行動神経内分泌研究会では、優秀発表賞を受賞した。また、一連の研究結果を学位論文として提出し、博士(理学)の学位を取得した。このように、一見生殖行動とは直接関係がないと思われる味覚の記憶保持と雄性ホルモンとの関係性が明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消去記憶保持機構の成熟に対するテストステロンの作用時期を明らかにすることが初年度の目的である。 性成熟前後のテストステロン受容体の遺伝子発現量の比較や、テストステロン投与時期を考慮した行動実験といった多様な方法を用いて、消去記憶保持機構の成熟にとって性成熟前のテストステロン曝露が重要であることを明らかにした。一連の研究結果を学位論文とし、博士(理学)の学位を取得した。また国内外の学会や国際雑誌論文で公表し、日本行動神経内分泌研究会では優秀発表賞を受賞した。以上から、着実に研究目的を達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、分子生物学的および神経行動学的手法を用いて、研究計画を遂行した。 平成25年度は、形態学的手法を導入し、性成熟前のテストステロン曝露の重要性の解明を目的とする。性成熟前後、あるいはテストステロン添加前後の関連部位の脳切片を顕微鏡観察し、性成熟前におけるテストステロン曝露が神経回路にどのような変化をもたらし、性成熟期に消去記憶保持機構を成熟させるのかを調べる。
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