研究課題/領域番号 |
12J01480
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大谷 真紀子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 地震発生サイクルシミュレーション / 東北地方太平洋沖地震 / 垂直応力の変化 |
研究概要 |
本年度においてはまず東北地方太平洋沖地震を対象に、その震源域(南側領域)の北側の領域との相互作用を調べた。我々はこれまでに東北地方太平洋沖地震の領域のみを考えて地震発生サイクルシミュレーションを行ってきたが、その北側には余効変動は大きいが過去に大きな地震が起こっていない領域(釜石沖)、さらに1968年十勝沖地震の震源域(北側領域)が存在する。なぜ破壊が北側まで達しなかったのかを考えるにはこれらの地域との相互作用を考える必要がある。そこで、南側・北側領域の地震サイクルをまず単独で再現し、次にこれら二つの領域の摩擦パラメタは固定して釜石沖の摩擦状態の変化がこれらの領域の相互作用にどのような変化を与えるかを検証した。その結果、釜石沖の摩擦状態によって北側と南側が同時に破壊する場合、しない場合の両方が生じることがわかった。今後、東北地震の余効すべりデータ等でこの摩擦状態を推定する等詳細な検証が必要である。 また、いままでは考慮していなかった垂直応力の変化を考慮した地震サイクルシミュレーションコードの開発を行い、簡単な逆断層モデル(地震発生領域において摩擦バラメタが一様)でその効果を検証した。地表を考慮した半無限弾性体中平面断層の場合、垂直応力が一定の場合には、破壊の開始後まず浅い側に破壊が進展し全領域の破壊に至る。同じモデルで垂直応力の変化を考慮すると、破壊はまず深い側に進展しその後全領域の破壊に至った。すべりに伴って垂直応力がその浅い側で増加・深い側で減少し、破壊に必要な応力が増加・減少したことで破壊が深い側へ進展しやすくなったのだと説明できる。最終的に破壊する領域は設定する摩擦パラメタに大きく依存するが、破壊の進展方向等に影響が見られ、例えばスロースリップの進行方向等にも影響すると考えられる。今後実際のプレート形状で垂直応力変化を考慮した際にどれほどの効果が出るかを検証する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超巨大地震とその隣接する領域との相互作用を考えたサイクル計算を行うことで、超巨大地震がどこまでの領域を破壊するかを考える際には発生する際には隣接地域の状態を考慮することが重要であることが分かった。 また、これまで考えていなかった垂直応力の変化がどの程度の影響をサイクルに与えるかの検証も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において垂直応力の変化を考慮した準動的サイクルシミュレーションコードの開発を行った。これにより破壊の進展等に影響を及ぼすことが分かったが、現在我々の計算では近似して扱っている慣性の項は、これよりも大きな影響を与えると考えられ[Lapusta and Liu, 2009]、この効果の導入が必要である。これを考慮するのが動的地震発生サイクルシミュレーションであるが、計算量が飛躍的に増大し、大規模な計算を行うのは難しい。そこで今後、密行列の効率的な圧縮方法であり、メモリ量・計算量の削減が期待されるH-matrices法の動的地震発生サイクルシミュレーションへの導入を試みる予定である。
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