日本近傍で発生する巨大地震を時代順に並べると、各地震が異なるプレートで発生しているにもかかわらず似たような時期に発生しているように見える。これらの地震はお互いに影響を及ぼし合っている可能性があり、 これらすべてを含むような大きな領域を対象とした列島規模の地震発生サイクルシミュレーション(ECS)を行う必要がある。それには異なる深さの海溝軸を考慮する必要があり、私は任意の地表面形状を考慮した均質弾性体中のすべり応答関数を用いて、試験的にフィリピン海プレート南海トラフ沿い及び太平洋プレート日本海溝沿いの両者を含むECSを行った。簡単のため、 約150年、600年に一度南海・東南海・東海地震(地震N)、東北地方太平洋沖地震が発生する場合を考えると、これらは互いの地震の発生の仕方に影響を与えなかった。地震Tによる剪断応力の即時的な増加は、フィリピン海プレート上東海地域で約0.03MPaであった。今後さらに、粘弾性媒質の効果を導入し、どのような影響があるのかを考える必要がある。これまでに行った研究結果を、日本計算数理工学会誌で発表した。 また、断層面形状に起因するすべりによる垂直応力変化が地震発生サイクルに及ぼす効果の検証を行った。ただしこのモデルはプレート境界面がするするすべるモデルであり、突起のひっかかりによる応力変化は考慮していない。沈み込む海山・東海地方に見られる沈み込む海嶺列を仮定して計算を行った。上に凸な突起物が存在すると、地震間に突起の深い/浅い側で垂直応力が増加/減少し、強度が増加/減少する。これにより突起浅い側で破壊が発生しやすく、海嶺列を仮定した場合には凹部分を中心に地震に至らない非地震性すべりが繰り返し発生する場合が得られた。浜名湖下で観測される長期的スロースリップは海嶺列の凹部分に位置し、形状がそのスロースリップの発生に影響を及ぼしている可能性を示している。
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