研究課題/領域番号 |
12J01486
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
榎本 彩乃 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | サーフェイスコイル・アレイ / CW-EPR / パラレルイメージング |
研究概要 |
本研究の目的は、生体の皮膚において広範囲にフリーラジカル分布を可視化する電子常磁性共鳴(EPR)イメージング法を新規に構築することである。昨年度までに作製したEPRイメージング用サーフェイスコイル・アレイ共振器では、複数の共振器を逐次的に駆動するため、チャンネル数の増加に伴い総画像取得時間が長くなるという問題が生じた。そこで今年度は、連続波EPRイメージングにおいて複数チャンネルで同時にデータ取得(パラレルイメージング)が可能な2チャンネル・サーフェイスコイル・アレイを開発した。パラレルイメージングを行う際には、2つの独立したマイクロ波ブリッジと2つの共振器を用いる。直近にコイルを配置すると、相互誘導現象により信号取得に悪影響を及ぼすため、互いに50MHz程度共振周波数が異なる共振器を用いることにより、相互誘導現象の抑制を実現した。その結果、各チャンネルにおいて独立に信号取得が可能となった。また、作製したパラレルイメージング用サーフェイスコイル・アレイを用いてフリーラジカル分子を含むファントムの三次元(3D)イメージングに成功した。 また、以前作製した逐次的な方法によるパルスEPRイメージング用のサーフェイスコイル・アレイ共振器を改良した。具体的には、手動で行っていた共振器の切替えについて、新たなコイル間の結合抑制方法により自動での共振器切替えを可能にした。この結果については、今後論文を投稿予定である。 以上より、今年度作製したサーフェイスコイル・アレイ共振器の使用により、以前よりも測定時間が短縮可能であることを示した。これは、in vivo実験を行う際に有利になる。本研究では、広範囲な皮膚内フリーラジカル分布の可視化を目的としているため、本年度の成果である計測時間の短縮は、本研究を遂行する上で重要な前進である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した本年度の実施計画は1年目に作製したサーフェイスコイルアレイ共振器の改良を行い、より生体計測に適した共振器を作製することであった。本年度では、連続波(CW)EPRイメージング、パルスEPRイメージングの両イメージング方法において共振器の改良に成功し、特にCW-EPRイメージングにおいては、生体計測において重要となる計測時間の短縮が可能であることを示した。このことより、本年度の計画をほぼ達成できたといえる。よって、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は作製したサーフェイスコイルアレイにより、皮膚内フリーラジカル分布およびその経時的変化が可視化可能である事を示す。これを実施するにあたり問題となるのは、パラレルイメージングを行ったとき、皮膚内フリーラジカル分布の可視化が可能なほどの信号強度が得られないということである。そのため、信号強度の低下の一因であるマイクロ波ブリッジ中の素子の飽和を防ぐことにより信号強度を向上し、皮膚内のフリーラジカル分布の可視化を行うことを検討している。
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