研究課題
異方的な相互作用ならびに静電相互作用が本質的な寄与を果たす系の非平衡ダイナミクスを、特に不均一性という観点から研究した。まず、粒子の形状異方性が本質的な寄与を果たす系のガラス転移現象において、回転運動が非常に盛んな領域と、まれな領域とが不均一に存在しており、並進運動と密接に関連していること、回転運動の拡散と緩和の分離の起源になっていることを明らかにした。一般に配向の自由度を有する分子性液体などのガラス転移現象において、分子回転の運動不均一性という新たな知見を示唆するものであると考えている。次に、静電相互作用が本質的な寄与を果たす粒子系における数値計算方法の構築を行い、電場下の動力学を調べた。その結果、電極表面での電荷が不均一に分布しており、その不均一性に由来する系内部の不均一な電場を、連続体極限の理論と整合する形で得ることができた。ここで構築した手法は静電相互作用をする系に広く適用可能であり、多くの応用例が期待できるとともに、媒質中の電磁気学や、電極表面での分子の振る舞いに関する、基本的な問題を考察するうえで有用な概念を有する結果であると考えている。さらに、その方法を用いて、電気双極子を有する楕円体と不純物との混晶において、配向秩序の振る舞いを調べた。そこでは、秩序が巨視的には消失しているが、数粒子程度の短いスケールでは分極秩序が生き残り、不均一に分布していることが分かった。また、外部電場に対して大きな分極・ひずみの応答を、顕著な周波数分散をもちつつ示すことを発見した。これらはリラクサー強誘電体に類似の性質であり、複雑な不均一構造・ダイナミクスが上記の簡略化したモデルでよく再現できるという驚くべき発見である。不均一性が本質的な寄与を果たす物理系の機構を解明するうえで示唆に富む結果である。
(抄録なし)
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