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2013 年度 実績報告書

皮質脊髄路損傷後に形成される新たな運動出力経路

研究課題

研究課題/領域番号 12J01502
研究機関筑波大学

研究代表者

山本 竜也  つくば国際大学, 医療保健学部, 助教

キーワード脳の可塑性 / 神経回路 / 腹側運動前野 / 第一次運動野 / 小脳核 / マカクサル / 損修
研究概要

中枢神経系の損傷による運動機能障害が、残存するシステムによって代償されるメカニズムについて、分子からシステムレベルに至る統合的理解を目指す。マカクサルを用いた行動学および脳機能画像解析(PET解析)により、第一次運動野(M1=皮質脊髄路を主に投射する領域)を損傷した後に手指の把握運動が回復すること、その背景に大脳皮質運動関連領域(特に腹側運動前野【PMv】)による機能代償があることが明らかにされた。すなわち、損傷を受けた経路自体が再生しなくても、直接的な損傷の影響を免れた大脳皮質運動関連領域が代償的に機能することにより、運動機能が回復すると考えられる。しかし、このような機能代償においてどのような神経回路が新たに構築されるのか(経路レベルの変化)については不明である。
本研究ではM1損傷マカクサルの機能代償領域(PMv)で新たに生じる代償経路の構造変化を脳機能画像解析(拡散テンソル画像解析)及び解剖学的トレーサー解析を用いて検証した。拡散テンソル画像解析の結果、M1損傷後にPMvから小脳核へと向かう出力経路に顕著な変化が見られた。解剖学的トレーサー解析の結果、M1損傷後の機能回復個体ではPMvから小脳核(特に室頂核 : FN)への投射が観察されたが、健常個体では観察されなかった。これらの結果は、M1損傷後に新たに形成されたPMvからFNへと投射する経路がM1損傷後の運動機能回復に寄与することを示唆する。
本研究成果は、脳損傷後の機能代償領域(PMv)から投射するマカクサル皮質下投射ニューロンの変化を世界で初めて示したものである。本研究成果とこれまでの行動・脳領域レベルでの検証から得られた知見とを統合することにより、損傷後の可塑的な変化に対するレベル縦断的な理解につながる。さらに本研究成果の発展により、脳損傷後の機能回復を促進させるための新たな手法の開発が期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究ではM1損傷マカクサルの機能代償領域(PMv)で新たに生じる代償経路の構造変化を脳機能画像解析(拡散テンソル画像解析)及び解剖学的トレーサー解析を用いて検証した。その結果、脳損傷後の機能代償領域(PMv)から投射するマカクサル皮質下投射ニューロンの変化を世界で初めて示すことが出来た。国際誌への投稿には未だ至っていないが、世界初の成果は出すことが出来たため、『②おおむね順調に進展している』と判断した。

今後の研究の推進方策

本研究結果はPMvからFNへ投射する経路がM1損傷後に新たに形成されることを定性的に示したものである。今後は3次元定量解析を用いて上記結果を定量的に検証し、これらの成果を国際誌へ投稿する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Differential Expression of Secreted Phosphoprotein l in the Motor Cortex among Primate Species and during Postnatal Development and Functional Recovery2013

    • 著者名/発表者名
      T. Yamamoto, T. Oishi, N. Higo, S. Murayama, A. Sato, I. Takashima, Y. Sugiyama, Y. Nishimura, Y. Murata, K. Yoshino-Saito, T. Isa, T. Kojima
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 8(5) ページ: e65701

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0065701

    • 査読あり
  • [学会発表] マカクサル第一次運動野損傷後に生じる腹側運動前野―皮質下投射の再編成2014

    • 著者名/発表者名
      山本竜也, 林拓, 村田弓, 尾上浩隆, 肥後範行
    • 学会等名
      第91回日本生理学会大会
    • 発表場所
      鹿児島
    • 年月日
      2014-03-17
  • [学会発表] マカクサル皮質脊髄路損傷後の機能回復に伴う運動関連領野の変化2013

    • 著者名/発表者名
      山本竜也、肥後 範行、佐藤 明、西村 幸男、大石 高生、村田 弓、吉野 紀美香、伊佐 正、小島 俊男
    • 学会等名
      第48回日本理学療法学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2013-05-26
  • [学会発表] 筋萎縮性側索硬化症の第一次運動の及び脊髄前角におけるSPP1発現2013

    • 著者名/発表者名
      山本竜也、村山繁雄、高尾昌樹、伊佐正、肥後範行
    • 学会等名
      第20回脳機能とリハビリテーション研究会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2013-04-21

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公開日: 2015-07-15  

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