研究課題
「高病原性鳥インフルエンザウイルスの病原性の解析」【目的と意義】鳥由来ウイルスであるH5N1ウイルスの人への感染・死亡例は依然増え続けている。近年、日本でもH5N1ウイルスが野鳥から分離されており、これらのウイルスがヒトに伝播する可能性がある。そこで、これらのウイルスがヒトに伝播した際の病原性の評価を行うために、マウスモデルを用いて病原性の解析を行った。【結果】国内で分離された37株のH5Nlウイルス株をマウスに感染させ、マウスにおける病原性を比較した。最も病原性が強い株として、A/mandarin duck/Kochi/3901C005/2011株(以下、Kochi株)を、最も病原性が弱い株として、A/common pochard/Hyogo/2801B004/2011株(以下、Hyogo株)選択した。今年度は選択した病原性の異なるこれら2株の、細胞における増殖について解析を行った。Kochi株およびHyogo株はともにトリ由来細胞株であるDF-1細胞では同程度の増殖を示したが、イヌ由来細胞株のMDCK細胞やヒト由来細胞株のA549細胞では病原性の強いKochi株の方が高い増殖能を示した。このことから、Kochi株は哺乳類での増殖に有利なアミノ酸を保持していることが示唆された。次に病原性の弱いHyogo株をバックボーンとして各分節を病原性の強いKochi株に入れ替えたウイルスを作出し、各細胞における増殖を比較した。その結果、Kochi株のポリメラーゼタンパク質PB2またはPBIを有するウイルスが、哺乳類由来の細胞株で効率よい増殖を示した。【今後の展望】Invitroの実験からKochi株のポリメラーゼタンパク質が、哺乳類の細胞における増殖に重要であることが示唆された。今後は、これらのタンパク質がマウスにおける病原性発現においても重要なのかを検討するために、マウスモデルを用いて解析を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
昨年度、in vitroにおいて、高病原性鳥インフルエンザウイルスの増殖に関わる因子を絞り込むことができた。これまでの研究はおおむね、計画通りに進んでおり、この結果をもとに病原性や伝播に関わる因子を同定できることが期待される。
これまでに、in vitroの実験から病原性の強いKochi株のポリメラーゼタンパク質が、哺乳類の細胞における増殖に重要であることが示唆された。今後は、これらのタンパク質がマウスにおける病原性発現においても重要なのかを検討するために、マウスモデルを用いて解析を行っていく。その後、それらのアミノ酸が哺乳類間伝播に与える影響について検討を行う。
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Journal of Virology
巻: 87(4) ページ: 2226-2233
10.1128/JVI.01565-12
Scientific reports
巻: 3
10.1038/srep01563