研究課題/領域番号 |
12J01510
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田崎 文得 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 活動銀河核 / ジェット / X線観測 |
研究概要 |
本研究では、これまでに日本のX線衛星「すざく」で観測したジェットをもつ高光度の活動銀河核(AGN)2天体のX線データを解析し、その成果をApJ誌に投稿した。我々は、ジェットのからの放射が大部分を占めていると考えられる電波強度から、X線データにおけるジェットの寄与を見積もるという世界初の手法によって、観測した2天体のうち、よりジェットの軸に近い向きで観測していると考えられるAGNではX線放射中に20%程度のジェット放射が含まれていることをつきとめた。この寄与を除いて解析することによって、ジェットをもつ高光度AGNは、中心核の周囲を覆うダストトーラスの立体核が小さい、または赤道方向の吸収体量が少ない、という結果を得た。これはジェットをもたないAGNで知られる、高光度なAGNは吸収を受けている割合が少ない、という関係性と一致し、ジェットの有無ではトーラス構造に違いがないことを示唆する重要な成果である。また、ジェットをもつAGNのX線データを使った系統的研究も行っている。 「すざく」で観測されたジェットをもつAGNの全アーカイブデータを取得し、最新の較正データベースを使って慎重にデータ処理を行った。さらにヨーロッパのX線衛星「XMM-Newton」の観測も合わせて全26天体・62観測のデータを使って系統的研究を進めている。我々は、ブラックホール周辺にあるガスやダストの幾何構造について調べるために、まずX線反射体から放射される鉄の蛍光X線に注目し、この輝線の強度や幅から、反射体の性質を調べた。この結果、吸収をあまり受けていないAGNは大きな吸収を受けたものと比べて、輝線幅が広く、より回転速度の速い、ブラックホール近傍まで観測できていることがわかった。今後は吸収を受けていないAGNを詳細に調べ、ジェットをもつAGNのブラックホール近傍の統一的な描像を理解する必要がある。 また日本の次期X線天文衛星「ASTRO-H」のscience working grouopのメンバーとしてプロジェクトにも大いに貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにないサンプル数でのジェットをもつAGNの研究を行い、この種族の中心核構造を明らかにすることは、順調に計画通り進んでいる。AGNや銀河の進化の謎を解明するためには、まずは近傍の(新しい)AGNを詳しく調べる必要があり、現在のジェットをもつAGNの描像を得ることは、おおむね達成しつつある。しかしながら、遠くの(昔の)AGNと比較し、その進化を調べるにはまだ及んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
したがって、上記のような評価を行った。 今後は、近傍のジェットをもつAGNの調査を完成させ、もっとも精度のよい観測データを用いることで明らかになった、その中心核構造を公表する。これは世界中のAGN研究者にとって有用な情報となるはずである。さらに、遠方のAGNとの比較も行い、AGN進化の謎に切り込んでいく。
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