研究課題/領域番号 |
12J01521
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
志達 めぐみ 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 全天X線監視装置MAXI / すざく衛星 / ブラックホールX線連星 / カタログ / X線光度変動 / 銀河面リッジX線放射 |
研究概要 |
今年度は、全天X線監視装置漁XIで得られた過去3年分の全データを解析し、観測期間全体にわたる高精度のバックグラウンドモデルを作成した。その際、国際宇宙ステーションの太陽電池パネルによりMAXIの観測視野が遮蔽される影響を考慮するため、各時刻の遮蔽領域のデータを除去するソフトウェアを開発した。これらの成果は、MAXI銀河系外ソースカタログ(廣井、上田、林田、志達他、Astrophysical Journal誌に投稿中)の作成において、バックグラウンドの寄与を正確に見積もり各天体のX線強度を精度良く求めることに貢献した。さらに、バックグラウンド強度の精度向上により、点源の検出だけでなく、銀河面リッジX線放射や最近Fermi衛星で発見されたFermi Bubbleなど薄く広がったX線源や宇宙X線背景放射の強度ゆらぎを精度よく測定することが可能になった。この研究と並行して、2012年4月にMAXIで発見されたブラックホール候補天体MAXI J1305-704に対して、甑XIチーム内の共同研究者とともにすざく衛星による緊急観測の提案を行った。観測は7月に実行され、得られたデータの解析を行ったところ、そのスペクトル中に電離したガスによる吸収構造が見つかり、光度変動の特徴から連星系の軌道周期とブラックホール質量が制限された。この成果を論文化し(Astrophysical Journal誌に2013年5月初めに投稿予定)、複数の研究会にて発表した。2012年9月には、ブラックホール候補天体H1743-322の増光を他のX線・ガンマ線モニタに先駆けてMAXIで検出し、The Astronomer's Telegramを通じて自ら全世界への速報を行った。加えて、ALMA望遠鏡や2015年度打ち上げ予定のASTRO-H衛星によるブラックホールX線連星のサイエンス検討を行い、複数の研究会で講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MAX1のリアルタイムの全天X線データに基づく、ブラックホールX線連星の増光の速報と、X線衛星と可視光・赤外・電波望遠鏡の連携による多波長同時観測については、すでに2件の観測が実行され、成果が得られている。現在もMAXIによりモニタを続け、次の緊急観測の体制を整えている。もう一つの研究課題であるMAX1による銀河系内ソースカタログ作成については、一部の検出器で運用方針が変更され、観測データの較正に予想以上の時間がかかったため、バックグラウンドモデル作成のための解析が遅れ、当初2012年度に着手する予定であったカタログ作成が2013年度にずれこんだ。ただし、カタログ作成のための解析手法はすでに確立できており、2013年度中には成果が得られると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られた高精度のバックグラウンドモデルと画像解析の手法を組み合わせることで、多数の点源が重なり合い今まで解析が困難であった銀河面領域で暗いソースを検出することが可能になった。2013年度には、当初の研究課題の1つである銀河系内X線ソースカタログの作成に着手する予定である。また、バックグラウンドの精度向上により、銀河面リッジX線放射など薄く広がったソースの強度を精度よく測定することも可能になった。今後、広がったX線源の解析もさらに進め、その起源を解明するための研究を行う予定である。また、2012年10月初めには、増光初期のブラックホール候補天体H1743-322をすざく衛星で観測した。さらに、共同研究者を通じて同天体の可視光および近赤外線データも得ることができた。現在、これら全データの解析を行っており、観測成果を2013年度中に論文化する予定である。
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