研究概要 |
昨年度に引き続き、全天監視装置MAXIを用いてブラックホールX線連星の光度変動を監視し、増光検出後は直ちに速報を発して、可視光・近赤外線望遠鏡とX線衛星の連携による多波長観測を実施した。2012年4月と7月に行われたブラックホール候補天体MAXI J1305-704のX線・可視光・近赤外線同時観測のデータを解析し、光度変動の特徴から、連星系の軌道周期が約9時間であることを突き止めた。これを論文化し(Shidatsu et al. 2013, ApJ, 779, 26)、複数の国際会議・国内研究会で発表した。さらに、2012年10月にX線天文衛星すざくと南アフリカ近赤外線望遠鏡IRSFで得られたブラックホールX線連星H1743-322のデータを解析し、幾何的に薄い標準降着円盤が低質量降着率下ではブラックホールから離れたところで途切れており、その内側では放射冷却が非効率な高温の降着流に変化することがわかった(Shidatsu et al. 2014, submitted to ApJ)。さらに、今年度中に新たなX線連星が噸XIで相次いで見つかり(MAXI J1828-243, MAXI J1421-613)、すざくとIRSFによる追観測を実施した。現在それらのデータをMAXIチームの共同研究者とともに解析中である。さらに、昨年度に自ら構築したMAXIの高精度バックグラウンドモデルと、MAXI高銀緯X線ソースカタログ(Hiroi, Ueda, Hayashida, Shidatsu, et al. 2013, ApJS, 207, 36)で開発されたイメージ解析手法とソフトウェアを利用して、銀河系内のブラックホールX線連星が多く集まる低銀緯領域のX線ソースカタログ作成に着手した。カタログ構築は、MAXIミッションの最重要課題の一つであり、交付申請書で述べたとおり、このカタログが完成すればブラックホールX線連星の系統的調査が初めて可能となる。
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