研究課題/領域番号 |
12J01544
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 直樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 細胞分化 / 非コードRNA / エピジェネティクス |
研究概要 |
本課題は哺乳類神経分化制御に関わるローカルなエピジェネティック制御機構を明らかにすることを目的としている。神経分化のモデル系としてはNGF刺激により神経細胞様に分化するラットPC12細胞を用い、プロモーターからアンチセンス方向に転写されるpromoter-associated noncoding RNA(pancRNA)に着目し研究を進めている。本研究の骨子は以下の二点に要約される。 [1]pancRNAを介したローカルなエピジェネティック制御機構の解明 既に未分化特異的pancRNAが同定された遺伝子プロモーター領域からに対してバイサルファイトシーケンス法とChlP法により、NGFによる分化前後でエピジェネティックな制御に関わっているかを調べた。その結果、プロモーター領域のDNAメチル化変化を伴わずヒストン修飾が分化過程で変化しており、今回解析した未分化PC12細胞特異的pancRNAはヒストン修飾を制御することで訳NAの発現制御を行なっていることが予想された。また、未分化特異的pancRNAをshRNAによりノックダウンしたところ、未分化PC12細胞は細胞死を起こしてしまう現象が確認された。 [2]細胞の分化記憶決定機構へpancRNAが果たす役割の解明 PC12細胞はNGF刺激のみでは、分化後に未分化細胞培養条件にもどしてやると神経突起が収縮し、細胞周期が再び復活するが、NGFに加えてcAMPを分化メディウムに加えてやると、未分化細胞培養条件に戻しても細胞周期は復活せず、分化記憶が固定される。この系を用い、分化記憶を誘導あるいは維持することにpancRNAが機能しているという仮説を検証している。未分化PC12細胞、NGFのみ加えた分化細胞、NGFとcAMPを加えた分化細胞のダイレクショナルRNA-seq解析を行うため、今年度解析用cDNAライブラリーの作成を終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未分化PC12細胞特異的なpancRNAは分化過程で減衰し、ヒストン修飾状態を制御していることが示唆された。さらに未分化状態でノックダウンすると、細胞死を引き起こす未分化特異的pancRNAを同定した。また、ダイレクショナルRNA-seq解析のためのライブラリー調製も終わっており、おおむね計画通りすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はRNA pull-down assayからのMS/MS解析によるpancRNA相互作用たんぱく質の同定を進めると同時に、ダイレクショナルRNA-seq解析からの分化記憶固定因子のスクリーニングを行う。また、マウスのプライマリー発生過程の神経幹細胞の初代培養系を用いて、同定されたpancRNAの機能がin vivoでも再現されるのかを解析する予定である。
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