研究概要 |
内臓脂肪の蓄積の程度を適切に評価することは,内臓脂肪の蓄積を早期に発見し,保健指導などの介入効果を適切に評価できる点で公衆衛生学的に意義がある.そのため,現在,内臓脂肪の評価は,経済面や安全面を考慮し,4番目の腰椎と5番目の腰椎間(L4-L5)のおよびお臍位の断面積を用いることが一般的となっている.しかし,近年,内臓脂肪全体の蓄積度合を最も反映する評価部位は,従来の部位より5~10cm上にあるという報告がなされ,従来の方法の妥当性に疑問が持たれている.また,現在までの研究は,主に欧米人を対象にしたエビデンスであり,体格や生活様式が顕著に異なるアジア人を対象にした研究の必要性が指摘されている.さらに,先行研究の大部分は横断的検討のみをおこなっており,縦断的エビデンスは十分ではないため,日本人(アジア人)を対象に,体重減少前後における肥満者の内臓脂肪量とその変化を適切に表す部位について検討する必要がある. 本研究はMRIのmultiple-slice法による24枚の内臓脂肪面積を用いて,MetS構成因子との関連性を検討した(1年目).さらに,最適な評価部位の断面積を用いて内臓脂肪量の推定式を作成し,疾患リスクの高い肥満を判定する際に必要な内臓脂肪量のカットオフ値を提示することを目的としてある(2年目).MRIのmultiple-sliceimagingを手法として,体重減少前後における肥満者の内臓脂肪量とその変化を適切に表す部位について,横断的・縦断的に検討したものである.研究の結果,従来の内臓脂肪面積の評価部位であるL4-L5位より5-6cm上の方が内臓脂肪の蓄積程度および減量によるその変化をより正確に評価できることが示唆された.また,心血管疾患リスク要因と内臓脂肪面積との関連性が認められ,特に,5-6cm上の内臓脂肪面積が最も関連することが確認された,本研究は,被爆の危険性がないMRIを用いて一枚ではなく複数枚で内臓脂肪を評価した点で新しい試みであったと評価できる.また,内臓脂肪の蓄積度およびその変化を包括的に検討し,最適な評価部位に着目した点は,新規性が高い.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために,3つの研究課題を設定した.そのうち,2つの課題が達成できており,今年度は残り1つの課題を実施する予定である.また,達成できた課題2つの結果として原著論文3編と複数の学会発表を残してある.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は問題なく,課題の実施ができたが,課題3である【内臓脂肪量の推定式作成】および【内臓脂肪量のカットオフ値の検討】のためには,より多くの横断データが必要である.平成24年度に約80名のデータ収集ができたが,より正確性が高い推定式の作成のためには今後100名のデータ収集を目標としている.
|