研究課題/領域番号 |
12J01570
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 研人 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | T2K / ニュートリノ振動 |
研究概要 |
T2K実験は、加速器によって得られたミューオンニュートリノを用いて、電子ニュートリノ出現事象による振動ハラメータθ13の測定、及びミューオンニュートリノ消失事象による振動パラメータθ23、及び混合状態の質量二乗差Δm^2_<23>の精密測定を行っている。実験手法としては、炭素標的から280mに設置された前置検出器及び295km離れた大型水チェレンコフ検出器(Super-K)にてニュートリノ事象数をはかり、両者を比べる事で実際にニュートリノかの振動したかどうかの検証を行っている。T2K実験では2012年にθ13がほぼ有意に0以上である事を、また今年2013年には非常に良い精度で測定されたθ23およびΔm^2_<23>の結果について発表を行った。次のステップとして、レプトンセクターでCP保存が破れているかの検証およびθ23のさらなる精密測定が課題とされている。そのためには反ミューオンニュートリノを用いたニュートリノ振動の測定が必要と考えられている。私はこの反ミューオンニュートリノの生成量を検証するためにCT(Current monitor)を用意し炭素標的下流118mに設置準備を進めた。このモニターにより反ニュートリノと共に生成された反ミューオンの量を測定できる事が期待されている。さらに予測精度向上のためのニュートリノフラックスの研究も行い、 Super-Kにおけるフラックス不定性を10%程度に抑える事ができたがミューオンフラックスについてはまだ改善の余地がある。また今年度はニュートリノ反応のモデルの向上を目的として、ニュートリノの鉄との荷電カレント反応断面積測定を始めた。これは前置検出器に近い位置に設置した主に鉄及び炭素で構成された検出器、INGRIDを用い、そこでのニュートリノ事象を測定する、という手法を用いている。いまだ測られていないエネルギー領域におけるニュートリノ反応断面積を測定する事で、これまで考えられてきたモデルの大きな手助けになり、ニュートリノ物理そのものの理解を深める事ができると期待されている。それだけでなく、この測定手法に用いられているトポロジーを使う事で、現在のニュートリノ振動の解析の向上に向けた取り組みも行っている。これにより現在のニュートリノ振動解析だけでなく、反ニュートリノ振動解析のより精密な測定を行える可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
反ニュートリノ生成研究のためのCTの準備もほとんど終わっていて、後はインストール検出器からの信号を確認するのみである。一方T2K実験では振動パラメータθ13を有意に0以上である事を確かめるため高統計量を必要としており、ニュートリノモードの測定を最優先にしている。したがって反ニュートリノモードのテスト実験はまだ先になる予定であり、当初の予定よりやや遅れをとっている。
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今後の研究の推進方策 |
T2K実験では現在ニュートリノモードを用いたデータ取得を起こっているが、この夏から始まる加速器のシャットダウンに伴い、一時実験を中断する。その前にCTを設置し、反ミューオンではなく、まずはミューオンによる信号を取得し、データ解析を行う予定である。また、モンテカルロを用いたニュートリノ・ミューオンフラックスについて、色々と改善の余地がある事が分かっており、このスタディも進めていく予定である。また、平行して現在解析中であるニュートリノ反応断面積の研究も進め、今年度中に結果を出す予定である。
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